SPECIAL

カイセド、ライス、E.フェルナンデス…高額移籍が相次ぐ守備的MFの理想像を再考する

2023.09.01

ついに最終日へ突入している今夏の移籍市場。その移籍金ランキングで際立つのは守備的MFの台頭で、トップ2をモイセス・カイセド(→チェルシー/推定1億3400万ユーロ)とデクラン・ライス(→アーセナル/推定1億1660万ユーロ)が占めている。昨冬もエンソ・フェルナンデス(→チェルシー/推定1億2100万ユーロ)が最高額を記録したように、直近1年で価値が高騰している守備的MFの理想像を西部謙司氏と戦術的視点から考えてみよう。

 中央のMFの価値は昔から高かった。位置的にチームの中心でプレーする選手なので、攻守両面での高い質が要求されてきた。しかし、時代によって起用される選手のタイプは微妙に変化している。

 現在はかつてのアンドレア・ピルロ、セルヒオ・ブスケッツに代表される司令塔型は少なくなっている。理想はビルドアップの軸としてパスワークに優れ、なおかつ守備力も高い選手であるのは言うまでもない。現在活躍中のデクラン・ライス(アーセナル)、ロドリ(マンチェスター・シティ)、ヨシュア・キミッヒ(バイエルン)などは理想的なタイプである。ただ、どちらを重視するかと言えば、まず守備力という傾向が出てきている。

 プレミア第3節時点で2勝1分と序盤好調のウェストハムはライスの後釜にアヤックスからエドソン・アルバレスを補強した。アルバレスはライスと比べると明確に守備型のMFである。チェルシーは昨冬のマーケットでエンソ・フェルナンデスをベンフィカから獲得。移籍金は推定1億2100万ユーロで当時英国史上最高額だったにもかかわらず、今季はそれを塗り替える推定1億3400万ユーロの8年契約に延長オプション付きでモイセス・カイセドをブライトンから獲得している。この2人もどちらかと言えば守備型だ。カイセドを取り逃がしたリバプールは遠藤航をシュツットガルトから緊急補強。こちらもブンデスリーガのデュエル王である。

守備力優先の背景にある試合展開の変化

 1つのチームが圧倒的に支配する試合が減っている。あるいは、それを意図しなくなっている。結果としてボール支配率が70%になることはあっても、それは相手が「ボールを持たない」戦い方を選択しているからだ。ボール保持の意思を持つチーム同士では、一方的な展開はより起こりにくくなっている。……

残り:2,534文字/全文:3,490文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

TAG

エンソ・フェルナンデスデクラン・ライスモイセス・カイセド遠藤航

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

RANKING