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「継続」のマリノスの中の変化。技巧派CB角田涼太朗が挑むテーマは「最後のキワで守る」

2023.03.02

筑波大学在学中にプロ契約し今年がプロ3年目のCB角田涼太朗が、開幕から王者マリノスのスタメンの座をつかんでいる。昨年は公式戦27試合出場とチャンスを得たが、終盤に出番を失ってしまった。今季に懸ける23歳の強い思いと、ピッチ上のプレーの進化に迫る。

 Jリーグの新シーズンが開幕し、J1の各クラブは2節までの日程を順調に消化した。オフに新天地を求めた選手たちも、これまでとは違う色のユニフォームをまとって躍動している。

 一方、J1には「新加入選手を1人もスタメン起用していないクラブ」が1つだけある。それは昨季王者の横浜F・マリノスだ。開幕戦の川崎フロンターレ戦と第2節の浦和レッズ戦でまったく同じスタメンを組み、イレブンは昨季も所属していた選手たちだけで構成されていた。

 ピッチ上でのパフォーマンスも「継続性」というワードが際立つもので、昨季と変わらない強さで勝ちを重ねている。とはいえ変化がまったくないわけではない。特に岩田智輝や高丘陽平が退団した守備陣には選手の入れ替わりがあった。

強い思いで臨んだスーパーカップで示した「結果」

 今季最初の公式戦となった2月11日の富士フィルムスーパーカップからJ1開幕戦、第2節と3試合連続で先発起用された角田涼太朗は「変化」を象徴する選手の1人だ。昨季はリーグ戦18試合出場にとどまった左利きのCBは、並々ならぬ覚悟でプロ3年目のシーズンに臨んでいる。

 昨季は前半戦こそ継続的に先発出場のチャンスを与えられていた角田だったが、夏以降はエドゥアルドにポジションを譲ることになってしまった。「シーズンが始まる段階で、序列で言えば自分は間違いなくサブの方に入っていた」という自己認識もあった。

 ならば、着実に成長していることを示して信頼を勝ち取るためにがむしゃらにアピールするしかない。

 練習試合でも公式戦のようなテンションでプレーし、「結果で見せていかなければいけない」と攻守に躍動。ヴァンフォーレ甲府と対戦したスーパーカップでは、角田の果敢な持ち上がりからチームの2点目が生まれた。

 「スーパーカップは自分が本当に試される場だったと思います。あの時は得点に絡むという目に見えた結果を残すことができた。これは想像していなかった展開だったと思いますし、(Jリーグの)開幕スタメンをつかむことができたのは、率直に嬉しかったです。そして、フロンターレ相手に勝てたことは自分の自信にもつながりましたし、ワンプレーに懸ける思いを表現できたのかなと思います」

富士フィルムスーパーカップ、甲府戦でドリブルする角田。自陣からの積極的な持ち運びで決勝点の起点を作った(Photo: Takahiro Fujii)

「ポジションを争っているようで争っていない」感覚とは?

 昨季はマリノスが3年ぶりのリーグ優勝を成し遂げる中で「ポジションを争っているようで争っていない」感覚が、角田の中にはあった。

 リーグ戦では開幕から3戦連続でベンチ外。5試合目でようやく初先発のチャンスを得て、約1カ月間にわたってレギュラーとして起用された。大卒1年目ながら堂々としたプレーを披露し、左足から繰り出す正確なパスで攻撃の組み立てにも関与できるCBの登場は大きな注目を集めた。

 勢いに乗って臨んだACLのグループステージでは、左SBでの起用にも応えて5試合に出場する。初挑戦となったアジアの舞台でも角田は確かな存在感を放ち、プロ初ゴールも挙げた。

 しかし、ベトナムでのタフな戦いの中で悔しい思いもした。左SBとして先発出場したグループステージ第4戦のシドニーFC戦、角田は64分に軽率なファウルで一発退場を宣告されてしまう。選手交代にともなってCBに移った直後に自身のミスから失態を犯してしまったのだ。……

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J1横浜F・マリノス角田涼太朗

Profile

舩木 渉

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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