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目指すべき場所が変わった昨シーズンを経て。京都サンガ・木村勇大が語る今シーズンへの決意

2023.02.16

曺貴裁監督の下で3シーズン目を迎える京都サンガF.C.は、今季新たなステップへ進もうとしている。12年ぶりのJ1を戦った昨季は16位。J2との入れ替え戦の末、残留は果たした。課題は明白で、昨季リーグワースト2位の30得点に終わった攻撃力のアップだ。オフにはG大阪から実績十分のFWパトリック、J2水戸で昨季12ゴールのFW木下康介、19年に京都で17ゴールのFW一美和成を補強。厚みを増したFW陣の中で、飛躍に期待がかかるのが関学大から加入したルーキーのFW木村勇大だ。すでに昨季特別指定としてリーグデビューも果たし、ルヴァン杯ではプロ初ゴールも記録したパリ五輪世代のストライカーに、プロ1年目のシーズンにかける思いを聞いた。

自分の特徴を持っている選手はいない

――キャンプを経て、シーズンに向かう現状の感触をまず聞かせて下さい。

 「(特別指定で)去年からプレーしたということもありますけど、周りも自分の特徴とか良さを理解してくれている中で、攻撃は自由にやらせてもらっています。その中で自分の特徴を出す部分はできていることが多いので、手応えは開幕に向けてあるんじゃないかなと思っています」

――昨季は関西学院大のエースとして、優勝した関西学生リーグ1部では13試合で12ゴール。特別指定選手としてプレーした京都サンガF.C.でもリーグ戦7試合、ルヴァン杯でも1試合プレーし、1ゴールを挙げました。大学とプロはどこに差を感じましたか?

 「プレースピードの違いは明らかにあったので、そこが一番感じました。特に攻守の切り替えや、それに伴う判断の速さが一番違いましたね」

――特に曺貴裁監督のスタイルでは、攻守の切り替えなどは強調されてきたと思います。その点への適応はどうですか?

 「キャンプやトレーニングをやってきた中で、ある程度はもう慣れてきたというか、それをベースとしてプレーすることはできるようになってきたんじゃないかなと思います」

――トレーニング内では左ウイングでプレーする姿を見かけますが、どういったプレーを心がけていますか?

 「自分の特徴が出しやすいので、すごく合っているんじゃないかなと思います。ゴール前で仕掛けてシュートまで持っていけるところや、低い位置からでもボールを持って運んでいける力はあると思っているので、そういう部分が出しやすいポジションかなと思います」

――チームはパトリックら、経験豊富なストライカーを補強しました。ライバルたちとのポジション争いをどう感じていますか?

 「他の選手にはその良さがあって、自分ももっと盗んでいくべきです。でも自分にある特徴を持っている選手は、やっぱりいないと思うので。そういう意味では、自分の特徴に関しては負けると思ってないし、いいところは盗んで成長に繋げればと毎日思っています」

――曺監督からは、木村選手の特徴や課題について、どんな指導を受けていますか?

 「特徴の部分に関しては監督も同じ認識でいてくれていて、ゴール前で自分が勝負できる状況をいかに作るか、と言われます。課題はオフ(ザ・ボール)の動きです。ボールを持って仕掛ける、運ぶというプレーが多くて、オフの駆け引きでマークを外してゴールを決めるとか、そういうのが少ないと。その部分はすごくキャンプでも求められて、課題だと言われていたので、自分の中でそこを整理して取り組んでいる段階です」

関西学院大学で得た刺激

――ここでこれまでのキャリアについても教えて下さい。大阪出身ですが東京ヴェルディのジュニア、ヴィッセル神戸のジュニアユースとJクラブの下部組織を経て、大阪桐蔭高、関西学院大と進まれています。

 「父の仕事の関係で東京に行って、ヴェルディのジュニアに入っていました。さらに神戸に引っ越して、ジュニアユースに加入した、という流れです。神戸のユースに上がりたい、と思っていましたが、上がれませんでした。高校は先輩が行っていた、ということもあって大阪桐蔭に進みました。ユースは上がれるか、上がれないかギリギリの位置にいたので、すごく悔しかったことは覚えています。でも見返そうと思ってやってきたので、大きな挫折でしたけど、あれがあったので今があるなと思っています」

――神戸時代はDF小林友希(セルティックFC)と同年代ですよね?

 「そうです。めちゃめちゃ仲いいんですよ」

――大学はなぜ関学に?

 「(高卒で)プロに行きたかったんですけど、自分を客観的に見て、まだ足りない部分が多いなと思いました。その中で関東の大学も考えたんですけど、当時結果も出していて(※入学する前年度18年はインカレでベスト8、天皇杯2回戦ではガンバ大阪にも勝利)、学力的にも優れていて、家からも結構近かったので決めました。入ってからは感じたのは、サッカーのレベルも高く、あとミーティングも多くて、人間的な部分も求められるチームでした。サッカーだけじゃなく、いろいろな部分に対して真剣に取り組めました」

――入学当時は4回生にMF山本悠樹、2回生にFW山見大登(ともにガンバ大阪)など、後にプロへと進む先輩もいましたね。

 「最初は大学も全然レベルが違って戸惑いました。でも夏ぐらいにはAチームに上げてもらって、そこで食らいつきながらもまれて、ある程度試合にも出してもらえるようになりました。1回のときの4回に(山本)悠樹さんがいて、すごい選手だったのでいろいろ教えてもらっていました。4回生が抜けて、山見さんと2トップを組むようになって。毎試合、彼に負けないぐらい点を取る、という思いでやっていました。学ぶところも多かったですし、1学年しか違わないので、負けたくないという気持ちも強かったですね。ずっと近くにいてくれたすごい先輩だったので」

――1年生の時はプレーの悩みを山本選手に相談していたと聞きました

 「動きとかプレースピードがやっぱり高校と全然違う中で、戸惑うことがあったので。そういう部分、動きだしへのアドバイスも含めて、いろいろと教えてもらいました」

多くのJリーガーを輩出している関西学院大学での日々は大きな刺激に

――プロにいけると感じ始めたのはいつごろですか?

 「3回生ぐらいには、プロにいけるんじゃないかなという思いは自分の中であって。(大学では)プレーに余裕が生まれて、やれるなっていう感覚が強くなりましたね」

――昨年は特別指定として京都サンガでプレーし、U―21日本代表にも選ばれて欧州遠征も経験しました。その中で感じた変化はありましたか?

 「去年は自分の中でみえる世界、プレーする世界が変わった激しい1年で。思っていたよりも大きな飛躍ができた、という感覚もありました。大学、Jリーグ、初めて代表で世界も経験して、自分が目指すべき場所がまた変わり、もっとこういう選手になっていかないとだめだなとイメージ像が変わったり。目指すものや世界がすごく変わったなと思います」

――U―21日本代表としては昨年9月にイタリア、スイスと対戦した欧州遠征にも招集されました。同世代の選手達とプレーして感じたことは?

 「今の自分と世界の差は感じました。もっと自分の成長にフォーカスしていくしかない、と改めて代表にいって感じたところです。あの活動は時間的にも短い中で試合が組まれていて、選手同士で練習中から特徴を伝える時間が少なくて、不完全燃焼という思いも残りました。それでも前線の選手は結果を残していけば、結局信頼を得られるはずです。もっと結果にこだわっていかないとだめだ、と思いました。あと世界は日本よりもハードワークの部分がすごかった。自分は全然まだ足りないと痛感しました」

昨シーズンはU―21日本代表としてもプレーした木村

二桁得点を取りたい

――ボールを持った際の推進力など、プレースタイルは韓国代表FWソンフンミン選手(トッテナム)に類似していると感じます。以前、好きな選手だと聞きましたが、どういった部分に惹かれていますが?

 「プレミアリーグで結果を残しているところもそうですし、アジア人であれだけやれるのはやっぱりすごいなと。映像で見るようになって、すごく気になる選手になりました」

――曺監督はヨーロッパのサッカーをミーティングで見せることも多いと聞きます。今季はイングランド1部で首位を走るバーンリーを研究しているとか。映像はご覧になっていますか?

 「曺監督から個人的に、自分に関連するような気になった場面を見せてもらうことがあるので、すごくイメージが湧きますし、わかりやすいです。バーンリーは前への意識がすごくて、ゴールに直結するプレーが全員の選択肢としてすごく多く、余計な回り道をしないというか……。ゴールを取るためのプレーが多いので、参考になるなと思います」

――木村選手のように、サイズ(185センチ)があってボールも運べる大型FWは、日本では希少なタイプかと思います。性格などはストライカー向きですか? 大学ではPKでパネンカを披露するなど、FW向きの大胆な性格に見えます。

 「子供の頃からずっと前のポジションをやっているので、性格的には合っているのかな、と思っています。ただ大胆な性格かと言われると……。時と場合によりますね。決まったストレッチなど、試合前のルーティーンがいくつかあって、それが崩れたらちょっと不安になったりとか、そういう繊細な部分もあります」

――チームは今季、タイトル獲得を目標に掲げています。木村選手にとってはプロ1年目ですが、チームの目標に貢献するために個人として目指す数字はありますか?

 「試合を重ねる中で、シーズンを通して二桁(得点)を取りたいっていうのは自分の中で強く思っています」

――パリ五輪のメンバー入り、という目標もあると思いますが、意識は強くなっていますか?

 「意識はしていますけど、そこに向けたアピールとかは考えていなくて。毎試合しっかり試合に出て、コンスタントに結果を重ねて、特徴をしっかり出していれば、おのずと結果はついてくるんじゃないかな、と思っています」

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Photos: AFLO SPORT , Getty Images

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京都サンガF.C.木村勇大

Profile

金川 誉(スポーツ報知)

1981年、兵庫県加古川市出身。大阪教育大サッカー部では関西2部リーグでプレー(主にベンチ)し、2005年に報知新聞大阪入社。野球担当などを経て、2011年からサッカー担当としてガンバ大阪を中心に取材。スクープ重視というスポーツ新聞のスタイルを貫きつつ、少しでもサッカーの魅力を発信できる取材、執筆を目指している。

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