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その舞台“WM”を整える裏方は誰か。マレズが主役、アルバレスが名脇役を演じた逆転劇を読む【マンチェスター・シティ 4-2 トッテナム】

2023.01.25

プレミアリーグ3連覇を目指すマンチェスター・シティだが、リーグ戦では3敗と、黒星数がすでに昨季と並んでしまった。それでも1月20日のトッテナム戦では、苦手とする相手(直近のリーグ戦では1勝4敗の負け越し)に対して後半に4ゴールを決めて逆転勝利に成功。ベルナルド・シルバやケビン・デ・ブルイネといった主力を温存しながらも、勝ち点3を挙げた一戦を西部謙司氏が振り返る。

 ホームのマンチェスター・シティはジョン・ストーンズ、マヌエル・アカンジ、ネイサン・アケの3バック。リコ・ルイスとロドリがボランチ、イルカイ・ギュンドアンとフリアン・アルバレスが1つ前のポジションを取る。左右はリヤド・マレズ、ジャック・グリーリッシュが幅を取り、中央にはアーリング・ホーランド。攻撃のフォーメーションは古のWM、[3-2-2-3]である。

 最近のヨーロッパは攻撃をWM仕様にしているチームが増えてきた。バルセロナは左SBバルデを高い位置に出し、左ウイングのペドリをインサイドへ移動させる形のWM。パリ・サンジェルマンは[3-4-2-1]からウイングバックがウイングになっているWMだ。なぜWMなのかというと、インサイドハーフに強力な選手を2人起用したいということが大きいのだろう。5レーンを埋めてしまうのはこれまでもあったが、相手も埋めてしまえば攻撃側のアドバンテージはほぼない。だから配置というより質のところでプラスを求めていると考えられる。

 バルサはペドリとガビのコンビ。パリSGはリオネル・メッシとネイマール。インサイドハーフ、あるいはWM時代の呼び方ならインサイドフォワードの2人が確かに強力である。彼らの技術と創造力を最大限に生かすことで突破口を見出していこうという狙いはよくわかる。しかし、シティが起用したのはギュンドアンとアルバレスだった。ベルナルド・シルバとケビン・デ・ブルイネならわかるが、ギュンドアンとアルバレスはやや小粒感が否めない。主役というより名脇役が似合っている2人を並べていた。

 ビルドアップは順調。後方の3人でスパーズの3人(ハリー・ケイン、ソン・フンミン、デヤン・クルセフスキ)を釣りだしてルイスとロドリにパスを通す。そこへスパーズのボランチ(ピエール・エミール・ホイビュア、ロドリゴ・ベンタンクール)が来たら、バイタルにいるギュンドアン、アルバレスへ通す。あとはドリブルで崩すかラストパスを送るか――WM時代の花形だったインナーのスキルとインスピレーションの見せどころだ。

……

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トッテナム・ホットスパーフリアン・アルバレスマンチェスター・シティリヤド・マレズ

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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