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チアゴ・サンタナは「柔と剛のハイブリッド」。2つの顔を持つ清水理想の9番を徹底分析

2022.07.31

第22節時点で17位とJ1で降格圏内に沈んでいる清水エスパルス。6月には監督交代に踏み切ったものの新指揮官ゼ・リカルドの下で上昇気流に乗り切れないクラブは、巻き返しを図るべく7月に北川航也、ヤゴ・ピカチュウ、乾貴士を獲得する大型補強を敢行した。しかし清水を追い続ける戦術ブロガー、猫煮小判氏が残留に向けたキーマンに挙げるのは、ここまで7得点と一人気を吐くエースのチアゴ・サンタナだ。3アシストも記録している万能ストライカーが清水にとって理想の9番である理由を解説してもらおう。

 7月16日、明治安田生命J1リーグ第22節、清水エスパルス対浦和レッズの一戦における27分のシーン。Jリーグ公式Twitterでも動画付きで紹介されたチアゴ・サンタナのボールキープ。この一連のプレーには、彼の得意とするスタイルが凝縮されていた。

 コントロール・オリエンタード。

 次のプレービジョンを持ち、意識したボールコントロールのこと。サンタナは縦のボールが入った瞬間、右アウトサイドで簡単にターンして前を向く。この際に上半身を内側に向けており、すでに行きたい方向に体の向きが設定されていた。このファーストタッチの段階で勝負あり。

 続いて、その2秒後には相手に囲まれた中で間をすり抜けていくが、最初のターンをした瞬間に視野に相手を入れており、寄せてくることはすでに把握済み。最高のファーストタッチをしたことで間合いに余裕があり、出そうにも足を出せない相手を悠々とかわしてオープンスペースにボールを運ぶ。この一連のプレーで2人を剝がし、そして左サイドだけで3人もの味方が上がれる時間を稼いでみせた。

世界最高FWを彷彿させる万能性

 チアゴ・サンタナのプレースタイルを表現するならば「柔と剛のハイブリッド」。足が特別速いわけでもなく、テクニックも水準より少し上といった感じ。ただ、持ち前のフィジカルの強さはもちろん、基礎能力やFWとしての感性、戦術理解度は高いレベルにあり、今や清水エスパルスにおいて最もなくてはならない存在である。

 ポルトガル1部サンタクララのエースストライカー(半年だけでチーム総得点の7割を叩き出す)という立場から来日し、即座にチームにフィット。今季もケガで序盤は出遅れながらチームトップ、リーグ6位の7得点を決めている名実ともに大エースのチアゴ・サンタナ。昨季はチーム内でも断トツの得点数13得点で、チーム内2位の鈴木唯人と中山克広ら6名が2得点という成績を考えたら数字上でも際立っているが、彼の凄さはストライカーとしてゴールを決める才能だけではない。……

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チアゴ・サンタナ清水エスパルス

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猫煮小判

静岡県静岡市…いや、静岡県清水市に生まれ育った自称次郎長イズムの正統後継者。好きな食べ物はもつカレー、好きな漫画はちびまる子ちゃん、尊敬している人は春風亭昇太師匠。そして、1番好きなサッカーチームは清水エスパルス!という、富士山は静岡の物でもの山梨の物でもない日本の物協会会長の猫煮小判です。君が清水エスパルスを見ている時、清水エスパルスも君を見ているのだ。

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