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「ダイビング」「コラプシング」「インナーダイビング」――CL決勝を完封したクルトワの飛び込み技術

2022.06.19

21-22CLで王者レアル・マドリーが演出した数々の逆転劇は、この男がゴールマウスに立っていなければ成立していなかっただろう。ラウンド16パリ・サンジェルマン戦ではPKストップを含む11セーブ、準々決勝チェルシー戦では8セーブ、準決勝マンチェスター・シティ戦では10セーブ。大会全体で史上最多となる57本ものシュートを凌ぎ、今やバロンドールに推す声も挙がっているティボー・クルトワの飛び込み技術を、決勝リバプール戦で披露した圧巻のパフォーマンスからGK分析家のレネ・ノリッチ氏に解説してもらった。

 レアル・マドリーが通算14度目となる欧州王者に輝き、幕を閉じた21-22シーズン。CL決勝の大舞台で4年前の雪辱を期すリバプールの猛攻を前に、最後の砦として立ち塞がったのは、“白い巨人”(レアル・マドリーの愛称)のゴールマウスにそびえ立つ2m級の大男、ティボー・クルトワだ。9にも上る好守の連続でことごとくピンチをしのぎ、ビニシウス・ジュニオールが決めた虎の子の1点を守り抜いての無失点勝利に大きく貢献。GKとしては実に14年ぶりとなるマンオブザマッチにも選出されるほどの際立った活躍を見せた。

 ゴールの隅まで手が届くアドバンテージがある一方、胴体周辺に飛んでくる鋭いシュートへの対応を弱点とするのは高身長のGKが抱える悩みの種だが、クルトワは例外だ。隙がないのは反応の速さに加え、状況に応じて「ダイビング」「コラプシング」「インナーダイビング」という3つの飛び込み技術を駆使しているから。それぞれを欧州頂上決戦でのプレーから解説していこう。

長距離には「ダイビング」、近距離には「コラプシング」

 まず「ダイビング」は、ボールに近い足を使って飛ぶ技術だ。例えば63分、モハメド・サラーが十八番とするカットインシュートを防いだセーブ。自陣ペナルティエリア左角付近からゴール右下を狙ってきたキックに対して、クルトワは右足を力強く踏み切り、右手で弾き出している。ペナルティエリア外からのキックはゴールに到達するまで時間がかかるため、際どいコースでも彼のように手足の長いGKはボールに一歩寄せた足に体重を乗せて地面を蹴り、大きく飛べば余裕を持って反応できる。

 さらにサラーのシュートは弾道こそ低かったものの巻くような軌道を描いたため、クルトワは触るというよりも腕を伸ばし切らずに肘から下を振ってはたき、無人の右サイドへとセーフティーにボールを叩き出してみせた。自身の身体的特徴を存分に生かしたダイビングを得意とするベルギー代表GKはミドルシュートに滅法強く、21-22シーズンはペナルティエリア外から飛んできたキックに対してリーガでは40セーブ、CLでは23セーブとともに大会最多の数字を記録している。……

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UEFAチャンピオンズリーグティポー・クルトワレアル・マドリー

Profile

レネ ノリッチ

1994年生まれ、東京都出身。少年団チームにGKコーチがいたことがきっかけでゴールキーパーをプレーし始める。ゴールキックを敵陣ペナルティエリア内まで蹴り込んでいた経験あり(小6)。2018年頃からゴールキーパーのプレー分析記事をブログやnoteに載せ始める。スタジアムでサッカー観戦する場合、GKのウォーミングアップから見始める。好きな選手はヤン・ゾマー、ニック・ポープ。