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2つの注目研究を紹介。2021年度フットボール学会Congressレポート

2022.04.14

第19回目となるフットボール学会が立教大学(オンライン)で開催された。今年は「Football after TOKYO2020~東京2020後のフットボールを考える~」をテーマに様々な研究発表、シンポジウムが行われた。その中から、静岡大学でサッカーを研究する平嶋裕輔氏に注目すべき2点の研究をレポートしてもらった。

東京2020後のフットボールを考える

 前回大会に引き続き、先月行われた2021年度の「日本フットボール学会 19th Congress」について紹介する。

 日本フットボール学会は2003年9月、フットボールに関する科学的研究と会員相互の交流によって、フットボールの発展に役立てることを目的として設立された。日本で唯一、フットボールを専門的に研究する学会である。

 2004年より学会大会を年1回開催し、会員同士の交流・研究発表の場を提供するほか、定期的に講師を招き研究会を実施している。フットボール学会やCongressの詳細については、昨年執筆した「指導者や現役のサッカー選手も研究を発表。フットボール学会Congressレポート 」を参照して頂けると幸いである。

 2021年度の「日本フットボール学会 19th Congress」は3月12日、13日の2日間で開催された。本年度も、新型コロナウイルス感染症の影響によりオンライン開催となった。2021年は、東京オリンピック・パラリンピックが1年遅れで開催されたこともあり、「Football after TOKYO2020~東京2020後のフットボールを考える~」という大会テーマの下、東京2020後のフットボールに関する興味深い講演やシンポジウムが実施された。その他にも、2021年に開催されたビーチサッカーやフットサルのワールドカップに関するワークショップも行われている。プログラムは公式HP をご確認いただきたい。

 今回は本学会にて私が興味をひかれた2つの研究について、発表者の先生に紹介いただいた。

女性指導者が活躍しているクラブの特徴

研究名:『WEリーグの理念実現に向けた各クラブの取り組みに関する研究―コーチングスタッフの編成に着目して―』(田井楓、平嶋裕輔、小井土正亮、中山雅雄、浅井武(筑波大学))

 2021年9月に日本初の女子プロサッカーリーグ(以下,WEリーグ)が開幕した。WEリーグは、日本のスポーツ組織で初めて参入基準に女性登用を義務付けており、それらの達成度合いを女性比率表として「見える化」している(表1)。競技現場においても「コーチングスタッフの中に女性指導者1名以上を含むこと」というような独自の項目を設けているが、トップチームにおいて女性コーチを登用していないクラブが存在していることや、女性監督は11人中1人であるなど、女性が指導者として活躍するためには改善すべき点がある。

表1 女性比率表

 そこで本研究では、WEリーグ参入にあたり、クラブがコーチングスタッフの編成において行ってきた取り組みとそれに伴う課題を明らかにすることを目的として研究を行なった。

 研究対象は女性登用に特徴のある3クラブを選定し、コーチングスタッフを編成する役割を担う者を対象者とした。データの収集は半構造化インタビューを実施し、インタビューデータを質的データ分析手法であるSCAT(Steps for Coding and Theorization)(大谷,2007)を用いて分析した(表2)。……

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フットボール学会育成

Profile

平嶋 裕輔

1986年生まれ、山梨県出身。宇都宮大学卒業後、筑波大学大学院に進学し同大学蹴球部でサッカー指導者としてのキャリアをスタート。その後、栃木SCレディースコーチ、カマタマーレ讃岐GKコーチ等を歴任。2018年度から2021年度までは筑波大学体育系特任助教としてサッカーの授業・研究をすると同時に、同大学女子サッカー部で監督を務めた。2022年度からは静岡大学にてサッカーの研究を行う。博士(コーチング学)

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