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大胆なセービングに隠れた繊細なディフレクティング。ミラン新守護神、メニャンの手足に宿る技術

2022.02.27

今夏フランス王者リールを離れ、1500万ユーロでミランに加入したマイク・メニャン。長年にわたり絶対的な守護神として君臨し続けてきたジャンルイジ・ドンナルンマの後釜に獲得されたが、その期待を上回るパフォーマンスを披露。2月も5日のミラノダービーでチームを救うビッグセーブを連発、13日のサンプドリア戦では決勝点を演出する活躍で目を引き、クラブの月間MVP候補にも選出されている。“ロッソネロ”(赤と黒)の新たな砦となったフランス代表GKの「ディフレクティング」を、GK分析家のレネ・ノリッチ氏に解説してもらった。

 マイク・メニャンのキャリアは、決して順風満帆なスタートではなかった。

 ユース時代を過ごしたPSGで2013年にトップチーム昇格を果たすが、出場機会に恵まれず2015年夏にリールへと移籍。直後にプロデビューを果たしたものの控えに甘んじており、再び先発するチャンスをつかみはじめたのは第1GKのビクトル・エニュアマが負傷した2016-17シーズン終盤戦から。そして2017年夏、当時リールの監督に就任した“奇人”マルセロ・ビエルサに才能を買われ、ついにメニャンは正GKの座を確保した。

 迎えた2017-18シーズンのリーグアン第2節ストラスブール戦では、チームが前半のうちに負傷者続出で交代枠を使い果たした中、63分にメニャンは口論から相手選手にボールを投げつけ不要なレッドカードをもらってしまう。数的不利に加えてフィールドプレーヤーがゴールマウスに立つ窮地に陥ったリールは、0-0から立て続けに3ゴールを許して格下相手に完敗を喫した。当然メニャンは戦犯扱いされたが、ビエルサは「あれ(退場)がターニングポイントだったわけではない」と庇護。出場停止明けの翌々節アンジェ戦で再びスタメンに名を連ねたメニャンは、徐々に指揮官の信頼に応えて本領を発揮していった。

 ビエルサがシーズン途中で解任されてからも不動の守護神として君臨したメニャンは翌シーズン、リーグ年間最優秀GKに選出される。2020-21シーズンにはリールが古巣PSGの4連覇を阻止するリーグアン優勝の立役者となった。データサイト『FBREF』によると、同シーズンを通したメニャンのセーブ率はティボー・クルトワ、ケイラー・ナバス、ヤン・オブラクに次ぐ欧州5大リーグ4番目の成績(79.4%)。クリーンシート率では彼らを上回るトップの数値(55.3%)を叩き出している。フランスでの実績が認められて2021年夏にミランへ完全移籍してからは、ジャンルイジ・ドンナルンマが抜けたゴールマウスを託され、セリエAで熾烈な優勝争いを繰り広げる強豪でさっそく実力を示している。

リール時代のメニャン。写真は2020-21シーズン、ELグループステージ第3節のミラン戦

掌と指を駆使した「ディフレクティング」

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マイク・メニャンミラン

Profile

レネ ノリッチ

1994年生まれ、東京都出身。少年団チームにGKコーチがいたことがきっかけでゴールキーパーをプレーし始める。ゴールキックを敵陣ペナルティエリア内まで蹴り込んでいた経験あり(小6)。2018年頃からゴールキーパーのプレー分析記事をブログやnoteに載せ始める。スタジアムでサッカー観戦する場合、GKのウォーミングアップから見始める。好きな選手はヤン・ゾマー、ニック・ポープ。

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