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人生を変えた曺貴裁との邂逅。流通経済大・佐々木旭がJ1王者入りをつかむまで

2021.12.24

圧倒的な強さで2021明治安田生命J1リーグの王者となった川崎フロンターレに2022シーズンの新戦力として、流通経済大学(以下、流経大)DF・佐々木旭が加入する。

埼玉平成高校という全国的には無名の高校から、流経大コーチ兼スカウトを務める大平正軌に見いだされ、大学サッカー界屈指の強豪へ進学。下級生の時は表舞台に出ることがなかったが、転機は大学3年生時に訪れる。現京都サンガFC監督の曺貴裁が流経大にコーチとして就任すると、左SBとして存在感を発揮し、多くのJクラブが注目する存在となった。

そして、複数クラブの争奪戦を経て、川崎フロンターレ入りを決めたのである。無名選手だった佐々木は大学4年間でどう成長し、「史上最強」との呼び声高いJ1王者への入団を勝ち取ったのだろうか。

「お金をもらえる練習をしろ」曺貴裁からの言葉

――今年、流経大は昇格1年目で12年ぶりの関東リーグ制覇を果たしました。おめでとうございます。

 「実感はなかったですね。シーズン前から『優勝しなければいけない』とずっと思っていました。J内定者が7人いたので、4~5位で終わってしまうと『大したことがないんだな』と思われてしまう。そういう意味では安心しました」

――選手たちは『曺貴裁さんがいなくなったから勝てなくなった』と言われたくなかったと話していました。そこも原動力かなと。

 「曺さんもそうですが、CBのアピさん(アピアタウィア久/ベガルタ仙台)、(伊藤)敦樹さん(浦和レッズ)が抜けて、誰がチームをまとめていくのか不安でした。特に自分たちの代は個性が強いので、敦樹さんをはじめ僕らをまとめてくれていた人が抜けて、そこで勝てなかったら周りに『曺さんの力だったんだな』と言われる。そうはなりたくなかったので、優勝できて安心しましたね」

――佐々木選手にとって曺さんはSBとして成長するきっかけをくれた指導者です。ある意味強烈なコーチだったと思いますが、彼がいなくなった今年、去年と同じことをやろうとしても難しいのかなと。ただ、佐々木選手もチームも去年に曺さんから学んだことを出せていたような気がします。そこの要因はどこにありますか?

 「曺さんはやれば褒めてくれる人でした。細かな部分でもしっかり僕たちのことを見てくれていて。『そこを見てくれているんだな』とモチベーションが上がる瞬間が多かった。でも、今年の最初はその曺さんの声かけがなくなったので、チームとしてパッとしない時期が続きました。ただ、J内定者7人が自覚を持って『自分たちが中心となって引っ張ろう』という話をしながら取り組んだことが大きかったなと思います」

――3年生のシーズン前に曺さんが来た時の印象はどのようなものでしたか?

 「正直に言って、試合に出られないと思いました。曺さんのサッカーは3バックというイメージがあったし、両サイドには運動量も求められるので。自分は中央でもらってさばくタイプの選手だったので『ああ、終わったな』と。ただ、昨年はコロナの影響でシーズンの開始が7月でした。このリーグ戦がなかった時間が僕にとって大きかったんです。この期間にSBとして起用されて、自分がこれまでできると思っていなかった縦への上下動という武器を見出してくれて。シーズンの開始が遅れたことが、結果的に良い方向に働きました」

――あらためて、曺さんから教わったものは。

 「自分が一番印象に残っているのは『お金をもらえる練習をしろ』と言われたことです。練習を見ている人がお金を払いたいと思うくらい、高いレベルで取り組むことを意識しろと。パスや、トラップの1つとってもそうだと。言われてからかなりこだわるようになりました。今年も、それは継続してできていましたね。

 (菊地)泰智(2022年サガン鳥栖加入予定)がめちゃくちゃいい時があって、曺さんが『お前にお金払えるな』と言っていたんですよ。『自分はまだだめか』とちょっと凹んだことがありました(笑)。 

 『試合の“ため”のアップにするな』と言われ、アップの練習もしたことがありました。驚きましたが、ここまでこだわるのは凄いな、と」

練習試合で感じたフロンターレの凄み

――3年生で名を上げて、ヴィッセル神戸、ガンバ大阪、浦和レッズなどから話をもらう中で、川崎フロンターレ入りを決断しました。ちなみにそれまでは他のチームの練習参加などはしていなかったのですか?……

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大学サッカー川崎フロンターレ

Profile

竹中 玲央奈

“現場主義”を貫く1989年生まれのロンドン世代。大学在学時に風間八宏率いる筑波大学に魅せられ取材活動を開始。2012年から2016年までサッカー専門誌『エル・ゴラッソ 』で湘南と川崎Fを担当し、以後は大学サッカーを中心に中学、高校、女子と幅広い現場に足を運ぶ。㈱Link Sports スポーツデジタルマーケティング部部長。複数の自社メディアや外部スポーツコンテンツ・広告の制作にも携わる。愛するクラブはヴェルダー・ブレーメン。

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