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今も昔も静岡学園は「ラテンの薫り」。高校サッカーからはみ出た哲学の源泉をたどる

2021.08.15

2年ぶりの開催となったインターハイの1回戦、優勝候補の一角と目されている静岡学園は仙台育英と激突。全国高校サッカー選手権で35回の出場を誇る強豪校相手に快勝を収め、悲願の初制覇に向けて好発進を切っている。初戦から今も昔も変わらない異色の技巧派軍団が体現した「哲学」を、現地で取材中の川端暁彦氏に同校の歴史も交えつつ紐解いてもらった。

 東京五輪の影響で例年より少し遅く始まった全国高等学校総合体育大会。通称のインターハイでよく知られるこの大会の男子サッカー競技も、8月14日から無事に開幕を迎えている。

 昨年度はコロナ禍によって大会の開催自体が見送られてしまったこともあり、大会に参加する各校の監督・選手からは「全国で戦える喜び」の声が次々と聞かれた。今年から出場チームを減らして日程面にも手が入っているのだが、そのあたりの話は大会の未来像を含めてまたのちのちの機会にするとして、今回は「ラテンの薫り」で知られる静岡学園高校について話してみたい。

 今大会の静岡学園は初戦で仙台育英と対戦。Jクラブも注目の好選手を擁する東北の名門校との戦いだったが、エースFW持山匡佑の2得点などで3-1と快勝。内容的にも、何とも“静学の初戦っぽい”戦いぶりだった。川口修監督はこう語る。

 「初戦らしい“お堅い試合”はやりたくなかった。どうしても全国大会の初戦というと、負けたくない、失点したくないというようなサッカーになりがちだけど、それは嫌だった。『前半から行こうぜ』と選手たちには話していた」

 試合前には、レジェンドである井田勝通前監督が選手たちを前に訓示……するのかと思いきや、何かギャグを言ったらしく笑いを取るなどリラックスした雰囲気も作って、試合へ臨んだ。

3-1のスコア、最初の15分に表れる「静学スタイル」

 チームが掲げるモットーは「どんな相手からも1試合3点取る」こと。逆に言えば、「2点以内に済ませられれば勝てる」という算段で、「1失点はあんまり気にしない」。この日も、最後に一発ぶち込まれて終わる流れだったので、監督によっては激怒する終わり方だったような気もするが、川口監督は「まあ、ああいう失点は気にしないようにしているんで」と意に介さなかった。

 とにかくタレントが多いチームではある。この日の2点奪った持山や、左サイドから鋭い突破を見せる10番のMF古川陽介、そして「大島僚太のようだ」という静岡学園における最高級の賛辞を受けるMF玄理吾といったJクラブ注目のタレントがひしめく。黒子系ボランチの菊池柊哉、最終ラインのU-17日本代表候補の2年生CB行徳瑛、あるいは両SBなど、どこを切り取っても好選手だらけ。

大先輩・大島僚太にも比されるMF玄理吾はこの日も「ほぼノーミス」(川口監督)と指揮官も絶賛のプレーぶりで、まったくボールを失わなかった

 ベンチには負傷で出場を見合わせた189cmの長身ながら確かな技術を持つU-18日本代表のDF伊東進之輔や、U-17日本代表の小柄な技巧派MF高橋隆大もいるのだが、彼らに代わってこの日の先発を飾ったDF三宅優翔、MF川谷凪といった選手もそれぞれのスペシャリティを持っている。

 そして、やっているサッカーが確かに「静学」である。……

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戦術文化静岡学園高校

Profile

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣『エル・ゴラッソ』を始め各種媒体にライターとして寄稿する他、フリーの編集者としての活動も行っている。著書に『Jの新人』(東邦出版)。

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