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初のJ1所属ベトナム人選手ダンバンラム。セレッソ移籍の裏で起きたトラブル

2021.02.22

セレッソ大阪がベトナム人GKダンバンラムの獲得を1月に発表した。ベトナム人としては過去にレコンビン(コンサドーレ札幌)やグエンコンフオン(水戸ホーリーホック)、グエントゥアンアイン(横浜FC)がプレーしたが、いずれも当時J2でJ1に所属するベトナム人はダンバンラムが初となる。ただ、彼が直近でプレーしたタイからは移籍を歓迎しない声も聞かれる。一体タイで何が起こったのか。

契約解除を表明してセレッソ加入。前所属ムアントンは事実無根と反発

 ベトナム人の父とロシア人の母を持つロシア出身のダンバンラムは、2019年にベトナムのハイフォンFCからタイの強豪ムアントン・ユナイテッドに完全移籍で加入した。ムアントンとしてタイトルは獲得できなかったものの、身長188㎝という恵まれたサイズを活かしたダイナミックなシュートストップで数々のピンチを救ってきた。チームへの貢献度は間違いなく高かっただろう。

 ベトナム代表としても活躍し、2019年のアジアカップでは準々決勝で日本と対戦。PKによる失点で敗れたものの好セーブを幾度も見せた。現在行われているワールドカップアジア2次予選ではこれまで5試合全試合に出場。ホームでのタイとの試合ではティーラトン・ブンマタン(横浜Fマリノス)のPKをストップするなど無失点で引き分けに持ち込み、ベトナムはグループ首位に付けている。

 ムアントンのロナリットダイレクターはダンバンラムの加入時、ソ連の往年の名GKレフ・ヤシンを引き合いに出して高く評価し、以前海外移籍が噂された時には「もしヨーロッパからオファーがあれば移籍を応援したい」などメディアに話していたが、セレッソ移籍に際して両者の関係は悪化した。

 今回、ダンバンラム側はまだ残っていたムアントンとの契約解除を表明し、フリーエージェントとしてセレッソに加入している。その理由としてムアントンによる金銭面の契約違反を挙げている。ここで両者が対立した。……

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セレッソ大阪ダンバンラム

Profile

長沢 正博

1981年東京生まれ。大学時代、毎日新聞で学生記者を経験し、卒業後、ウェブ制作会社勤務などを経てフリーライターに。2012年からタイ・バンコク在住。日本語誌の編集に携わる傍ら、週末は主にサッカー観戦に費やしている。

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