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瀬古歩夢の危機感、中村草太の奮闘…“9戦0勝→首脳陣総辞職”のル・アーブルで日本人3選手が見据えるもの

2026.11.06

おいしいフランスフット #34

1992年に渡欧し、パリを拠点にして25年余り。現地で取材を続けてきた小川由紀子が、多民族・多文化が融合するフランスらしい、その味わい豊かなサッカーの風景を綴る。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第34回(通算192回)は、パリ・サンジェルマン戦が行われたスタッド・オセアンから、開幕2カ月未勝利のル・アーブルと、その中で奮闘する“ハック3兄弟”の現状をレポート。

うつむく瀬古「サポーターのみなさんに申し訳なくて……」

 ル・アーブルが、厳しいシーズン序盤戦を過ごしている。

 開幕からいまだ勝ち星なし。10月30日に行われたリーグ1第9節のパリ・サンジェルマン(PSG)戦に敗れると、第5節から5連敗。2分7敗で勝ち点2の最下位に沈んでいる。

 PSG戦では、18分に見事なカウンター攻撃から先制点をゲットしたのだが、欧州チャンピオンはその後、アクラフ・ハキミがハットトリックを成功させるなど5点を奪取。1-5で完敗した。

 「前半、最初はローブロックからいい形でカウンターが決まったんですけど、その後すぐに失点してしまったところで、すべてゲームが崩れちゃったかなと思います……」

 試合後にそう語った瀬古歩夢の口調も重い。

 低い位置でセニー・マユルからボールを奪ったあと、この日先発した中村草太がドリブルで持ち上がって右サイドに展開。そこから攻撃陣がうまくつなぎ、最後は今夏ウェストブロミッチ(イングランド2部)から加入したナイジェリア人FWジョシュ・マジャが決めた。王者からの先制点奪取に本拠地スタッド・オセアンは沸きに沸いたが、終わってみれば大敗。

 試合終了後、ゴール裏のサポーター席に挨拶に行く恒例の儀式の間中、瀬古はずっと、うなだれていた。終盤はFW並みに前線まで上がっては、必死に得点チャンスを手繰り寄せようとしていた背番号15。いつもどおり、持てる力をすべて出し切って戦った瀬古を労うように、スタッフがかわるがわる肩を叩いたが、そのたびにいったん上げた頭をすぐに下げて、瀬古はうつむいていた。

 「一生懸命に応援してくれているサポーターのみなさんに申し訳なくて……」

 というのがその時の心境。サポーター思いの瀬古らしい。

(Photo: Yukiko Ogawa)

 この不振には、いくつかの不運が重なり合っている。まず大前提として、この夏、大幅なメンバー変更があったこと。クラブ関係者の話では、選手、スタッフを含めて25人以上が入れ替わったという。

 PSG戦の先発イレブンを見ても、昨シーズンからいたのは瀬古とMFシモン・エボノグの2人のみで、その2人も在籍2年目、というまるっきり新しいチームだった。

 とりわけ厳しいのはディフェンスラインだ。昨シーズンは、順位は14位(全18チーム)ながら失点数44は下から数えて5番目と、得点数では全体で3番目に少なかったル・アーブルの残留を支えたのは強固な守備だった。

 ところが、GKと4バックを合わせた5人のうち、セネガル代表で北中米ワールドカップにも出場した正GKのモリー・ディアウを筆頭に、瀬古を除く4人が離脱してしまった。

 おまけに開幕戦から好セーブを連発していた新守護神、コンゴ民主共和国代表のリオネル・ムパシは、第3節ブレスト戦の終盤にアキレス腱断裂の大ケガを負ってしまい、今季は全休となる可能性が高い。

 そんな不安定な状況のもと、第9節の時点ですでに20失点と、昨年の失点数の約半分に迫る勢いだ。

 サポーターや現地記者たちの間で聞かれるのは「瀬古が残ってくれてよかった。彼がいなくなってたらどうなってたか……」という声だ。

 瀬古は昨シーズンのクラブ年間MVP。シーズンオフには移籍の可能性も探っていたようだが、最終的にル・アーブルに残留することになったのは、サポーターやクラブにとってはこの上ない朗報だった。

中村草太(24歳)、瀬古歩夢(26歳)、水多海斗(26歳)

「もう言い訳はできない…こういう時こそ一人ひとりが…」

 とはいえ、現状は孤軍奮闘気味であるのは否めない。

……

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Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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