EL GRITO SAGRADO ~聖なる叫び~ #30
マラドーナに憧れ、ブエノスアイレスに住んで35年。現地でしか知り得ない情報を発信し続けてきたChizuru de Garciaが、ここでは極私的な視点で今伝えたい話題を深掘り。アルゼンチン、ウルグアイをはじめ南米サッカーの原始的な魅力、情熱の根源に迫る。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第30回(通算189回)は、北中米W杯の準決勝で実現したイングランド対アルゼンチンについて、知っておきたい予備知識をまとめた。「単なるサッカーの試合」にとどまらない両国の因縁、歴史の巡り合わせとは?
マルビーナス、マラドーナ、そしてメッシの最後のW杯のために
「伝えたいのは、これがあくまでもサッカーの試合であるということ。余計な意味づけをするべきではない」
準決勝進出を決めた直後の会見で、イングランドとの対戦について「何か伝えたいことは?」と聞かれたアルゼンチン代表のリオネル・エスカローニ監督は、まるで諭すように、有無を言わせぬ口調でそう断言した。1982年に起きたフォークランド(アルゼンチンでの呼び名はマルビーナス)紛争を絡めたコメントを引き出そうとした記者に対し、憶測や感情論が入り込む余地を与えなかった。
#SelecciónMayor La palabra del entrenador Lionel Scaloni en la previa del encuentro ante Inglaterra🎙️🇦🇷 pic.twitter.com/TfEBPuvalk
— 🇦🇷 Selección Argentina ⭐⭐⭐ (@Argentina) July 14, 2026
その頃ミックスゾーンでは、リオネル・メッシも同様の質問を受け、このように答えている。
「自分にとってイングランドと対戦するのは初めてだから、特別な試合になる。これまでいろんなチームと対戦してきたけれど、イングランドとはまだなんだ。彼らは偉大な強豪チーム。そんな相手と試合ができるのは素晴らしいことだよ」
これらのメッセージからは、イングランド戦とマルビーナス紛争を切り離そうとするチーム側の意図が明確に感じられる。目の前の一戦に全神経を注ぐ彼らにとって、不要な感情を掻き立てるような言動はプラスにならない。まして、試合前に対戦相手を挑発、刺激するような振る舞いは、現在のアルゼンチン代表メンバーが最も嫌う行為でもある。
だがアルゼンチンの人々にとって、マルビーナス紛争を完全に意識の外に追いやることは容易ではない。現に今大会でサポーターが歌い、選手たちも口ずさむ応援歌にも、マルビーナスへの言及が含まれている。
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Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。
