セスクのコモは“逆張りの最先端”。バイエルン的強度を生む古典の再解釈
新・戦術リストランテ VOL.109
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第109回は、セスク・ファブレガス率いるコモ1907を取り上げる。縦パスをトリガーに一気に加速する攻撃と、それに連動するハイプレス。構造に依存しすぎない流動性と、選手の主体性が生むカオス。なぜコモはバイエルンに近いのか――その戦術的な核心を読み解く。
「アーセナル+バルセロナ」要素の融合
セリエA第29節、ローマを2-1で下したコモが4位をキープ。5位ユベントスとの差は1ポイントですが、このまま4位をキープできれば来季のCL出場が決まります。この試合まで51ポイントで並んでいたローマを蹴落としたのは大きかったですね。
コモ1907はその名の通り1907年設立のクラブ。OBにはロッシ、タルデリ、ザンブロッタ、セレーナ、バレッラと高名な選手がいますが下部リーグ時代が長かった。2019年にインドネシアの富豪ハルトノ兄弟が買収してから街ぐるみの強化策を打ち出し、1億ユーロ規模の補強を2年連続で敢行。23-24シーズンにセリエA昇格を果たし、24-25は10位、今季は29試合を消化してCL出場圏内の4位という躍進ぶりです。
率いるのはかつてコモでプレーしたセスク・ファブレガス監督。自身がプレーしたアーセナル、バルセロナの要素もふんだんに盛り込まれていますね。
ボール保持力が高い、しかし攻撃は縦に速い。48得点はインテル、ユーベに次ぐリーグ3位です。さらに22失点はミランに次ぐ少なさ。攻撃的なスタイルながら失点が少ないというバランスの良さが現在の順位をもたらしています。
フットサル的“ピヴォ当て”が生む攻守一体構造
基本的には[4-2-3-1]システムのコモですが、ローマとの大一番では[3-4-2-1]でした(下図)。

評判の10番ニコ・パスを1トップに据え、CFドウビカスはベンチスタート。後半に登場して1ゴールを決めたドウビカスは、セリエAの得点ランキングで2位のゴールゲッターです。得点源を先発で使わなかったわけですが、そのためにこのチームの攻守の機能性がかえってよく表れていた気がします。
コモの特徴としてGKビュテを組み込んだビルドアップ、攻め込み後のハイプレスがあるのですが、これらは現代サッカーでは多くのチームが持っている、あるいは目指しているものです。コモが異色なのは、攻撃と守備を連結している仕組みだと思います。言い換えれば、攻撃の選択がそのまま守備の準備になっている。
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。
