ゼルビア・チャレンジング・ストーリー 第29回
町田の名を全国へ、そして世界へ轟かせんとビジョンを掲げ邁進するFC町田ゼルビア。10年以上にわたりクラブを追い続け波瀾万丈の道のりを見届けてきた郡司聡が、その挑戦の記録を紡ぐ。
第29回は、3試合を残しリーグ優勝の可能性が完全に潰えた2025シーズンのJ1での戦いについて。8連勝から一転、8試合でわずか1勝(5分2敗)と失速した原因を究明する。
90+4分、浦和レッズの守護神・西川周作からのFKをオ・セフンがはね返し、クリアボールの落下点に入ったナ・サンホがバイシクル気味のクリアで自陣ゴールからボールを遠ざけると、福島孝一郎主審のホイッスルが鳴った。浦和に勝てばリーグ制覇の可能性が繋がる直近のJ1第34節のアウェイゲームは最後まで1点が遠く、0-0の引き分けでタイムアップ。試合後、他会場の首位・鹿島アントラーズが京都サンガF.C.と引き分け、町田は残り3試合で首位チームの勝ち点には届かないため、リーグ制覇の可能性が消滅した。浦和戦後のミックスゾーン。昨季3位でリーグ優勝を逃した悔しさを知る相馬勇紀は、無念の表情を浮かべながらこう語った。
「京都戦の(勝ち点)マイナス2と広島戦のマイナス3だったことが優勝に届かなかったキーポイントでした。昨季は広島との天王山のような試合で負けて、その悔しさがあったにもかかわらず、勝っている試合で勝てなかったことが2試合もあった影響は大きかったです」
後半戦のスタートから怒涛の8連勝をマークし、猛スパートで上位を追撃。次第に大逆転でのリーグ優勝の機運は高まったが、上位との勝負どころで勝ち点を落としたことや10月の3戦未勝利がV逸の決定打となった。黒田ゼルビアにとって、痛恨の足踏みを強いられた原因とは何だったのだろうか。
勝負の上位対決でリードを守り切れず
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Profile
郡司 聡
編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、エルゴラッソ編集部を経てフリーに。定点観測チームである浦和レッズとFC町田ゼルビアを中心に取材し、『エルゴラッソ』や『サッカーダイジェスト』などに寄稿。町田を中心としたWebマガジン『ゼルビアTimes』の編集長も務める。著書に『不屈のゼルビア』(スクワッド)。マイフェイバリットチームは1995年から96年途中までのベンゲル・グランパス。
