指揮官交代で浮上を期すアルビレックスの本気度。入江徹新監督が目指すのは「ハードワーク」+「ポゼッション」=「アップデートされた新潟スタイル」

大白鳥のロンド 第24回
6月23日。アルビレックス新潟に激震が走る。今季から指揮を執っていた樹森大介前監督の契約解除とともに、入江徹コーチの新監督就任が発表され、残りのリーグ戦はアカデミーやレディースでの指導経験も持つ47歳に託された。初陣は川崎フロンターレに1-3で敗れたものの、ここからはもう浮上していく以外にJ1残留への道はない。川崎戦を現地取材した野本桂子に、オレンジに輝く希望の光を見出してもらおう。
涙の新監督就任会見。樹森大介前監督の後を引き継ぐ覚悟
アルビレックス新潟は、6月23日、樹森大介前監督の契約解除を発表。後任として、トップチームのコーチである入江徹氏が新監督に、内部昇格という形で就任した。
チームは5月以降、降格圏で足踏みを続けている状態。リーグ戦が残り18試合となった段階で、クラブはこの決断に至った。
入江監督は静岡県出身。静岡北高校を卒業後、柏レイソル、ヴィッセル神戸、ガンバ大阪でプレーしてきた元DFである。現役引退後の2008年から新潟で指導者を始め、今季で17年目。アカデミーの各カテゴリーやレディースでも指導を行ってきた。22年、松橋力蔵監督就任とともにトップチームヘッドコーチへ就任。主に守備の指導を担当してきた。
24年は、プロチームを指導できるProライセンス取得に挑戦。必要な講習を受けるためにたびたびチームを離れざるを得ないため、ヘッドコーチではなくコーチとしてチームをサポートした。シント・トロイデンで海外研修を行い、無事にProライセンスを取得すると、今季もトップチームコーチとして契約。樹森監督体制となったチームの中で、主に守備の指導と試合当日のメンバー外選手の指導を行ってきた。
指導者として、経験を積ませてもらった新潟への感謝と愛は強い。
監督就任会見では「これだけの温かいサポーターがたくさんいるクラブは、なかなかない。いろんなスポンサーの方々や県民の皆様が、これだけ応援してくれるところも地方としては珍しい。こういうクラブは日本のトップのレベルにいなければいけないですし、大事にしていかなければいけないと、17年間思ってやってきた。今年、苦しいかもしれませんけど、絶対落とせないという思いが……ものすごく強い」と、涙で声を詰まらせながら、引き受けた覚悟を語った。
「自分もコーチとして携わってきた中で、結果が出せず、すごく責任は感じています」という思いと同時に「今一緒に戦っている選手やスタッフだったら、絶対に状況を変えられると確信している」からこそ、クラブから与えられた重要なミッションを引き受けた。
入江監督の就任会見の様子は、即日YouTubeでも配信された。これを見た高木善朗は「入江さんも、ずっとこのチームを近くで見てくれていましたし『もっともっとできる』と思って見てくれていた。あれだけ熱い会見を見たら、選手1人1人がもっともっとやれることをやるのが大事かなと思います」と受け止めた。

アルベル監督が“つなぎ目”となった新旧スタイルの融合
“入江アルビ”の初陣は、就任発表から2日後の6月25日。アウェイで行われた明治安田J1リーグ第15節・川崎フロンターレ戦だった。
試合前日、入江監督は、自身が思い描く新潟のサッカーをこう語った。
「アルビレックス新潟の歴史を考えると、ベースとなっているのは、泥臭く、粘り強く戦うところ。ハードワークするのは当たり前。その上で、ゴールキーパーからビルドアップして、数的優位を作りながら攻撃していく形。やり始めて6年目となりますが、まずは土台をしっかりした中で、今の攻撃をどうブラッシュアップしていけるかだと思っています」
ここ数年は「新潟スタイル」と言われる、ポゼッションの部分がフォーカスされてきたが、その手法も、アルベル監督、松橋監督、樹森監督と3人の手を経るごとに、少しずつ変化している。入江監督は、これまでのスタイルを継続することは明言。ただ、そのスタイルを積み上げていく土台ともいえるハードワークの重要性を、あらためて強調した。
アルベル監督の2季目続投が決まった2021年。寺川能人強化部長(当時)はこんなことを話していた。
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Profile
野本 桂子
新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者を務める。新潟を舞台にしたサッカー小説『サムシングオレンジ』(藤田雅史著/新潟日報社刊/サッカー本大賞2022読者賞受賞)編集担当。現在はアルビレックス新潟のオフィシャルライターとして、クラブ公式有料サイト「モバイルアルビレックスZ」にて、週イチコラム「アイノモト」連載中。