『未来は今の積み重ね』を体現する奥山政幸。仲間に尊敬される守備職人が見据えるベガルタ仙台J1昇格への道筋

ベガルタ・ピッチサイドリポート第26回
その人間性は、たたずまいに現れる。ベガルタ仙台に所属する31歳。奥山政幸のサッカーと向き合う真摯な姿勢は、いつ、どこにいても、我々にはっきりと伝わってくる。今季からは完全移籍に移行し、杜の都でJ1昇格を見据える「おっくん=マサくん=オク」が今感じている想いを、おなじみの村林いづみが掬い取る。
誰もが絶賛する人間性。みんなが饒舌に語りたくなるキャラクター
奥山政幸選手。ひとたびその名を出すと、チームメートは途端に饒舌になる。仲間に愛され、尊敬される31歳のサイドバックへ、味方からの称賛の声が止まない。
「おっくん(奥山選手の愛称)は名古屋グランパスU-18の先輩です。おっくんが早稲田大学の時の監督の古賀聡さん(現・明治学院大学サッカー部監督)には僕もユースの3年生でお世話になったんですが、『歴代最高のキャプテンだ』と言っていました。私生活もサッカーへの向き合い方もすごいと聞いていました。実際に一緒にプレーしていても、どんな状況でも手を抜くことはない。行動一つ一つから学ぶところがあります。悪いところ?ないですよ。探しておいてくださいよ」(井上詩音選手)
「危機察知能力や対人の強さは、このチームでもずば抜けていると思います。町田の時もマサくん(町田時代の奥山選手の愛称)がいると安心してプレーができる。試合に出れば相手のキーマンに仕事をさせない。千葉戦もそうでしたが監督も信じて起用するし、任されたことを90分間やり遂げる。日々の行いから素晴らしいので、ポジションは違っても尊敬しています。町田の時から3年間、素晴らしい人の近くでプレーできているんだなと思います。メンバーに入らなかった時期も練習から全力。そういう姿を町田でも見ていました。誇らしいです」(荒木駿太選手)

第16節のジェフユナイテッド千葉戦で4試合ぶりに左サイドバックで先発出場を果たすと、「これぞ、守備職人」という貫録を見せつけた。首位の千葉を無失点で抑え、起用した森山佳郎監督にとっても手応えの一戦となったようだ。
「奥山は一切ぶれない。このところ、ずっとサブで来ていた中で『ちょっと今回はオク(奥山選手の愛称)が良いかな』と思って先発で試合に出したら満点回答。千葉戦でしたが、対面する田中和樹選手があれほど出てこない試合もこれまでなかったと思うくらい完璧に抑えてくれました。うちには石尾(陸登)もいるし、というところでは、試合に出たり出なかったりという状況です。しかしオクはピッチの中では常に100%でやってくれます。常にすべてを出す。メンタル面もフィジカル面も良い準備をして100%を出してくる選手です。信用できる、心中できる人間です」
「オクは常に100%良い準備をしています。試合に出したら良いプレーをするし、『今日は俺だろう!』という試合で出せなくてもすぐに切り替えて、チームのためのことをしてくれる。素晴らしい、手本になるベテランがいる。口数が多く、選手に指示を与えるタイプではないですが、先頭に立って背中でいろんなことを伝えてくれる選手。そういう選手が僕らのチームにいるということは貴重であり、ありがたいこと」
指揮官も全幅の信頼を寄せる奥山選手へ、5月に続いた上位との激闘、最近の思いについて伺ってみた(取材は千葉戦後の5月22日、いわきFC戦後の5月28日に実施)。

サイドバックタイプの選手が同じピッチに4人?失意の大宮戦から、強みを取り戻した千葉戦
――第16節千葉戦では、サイドバックタイプの選手が同時に4人ピッチへ入る時間がありました。珍しい光景でした。
「そうですね。以前、(第14節)藤枝戦ではボランチが4人ピッチにいましたよね?本当にみんながみんな、個性を持っていて、それぞれの強みを生かせる選手だと思います。面白いシーンではありましたよね。みんなのがんばりが4人同時出場にもつながったと思うので、切磋琢磨しながらやっていきたいと思います」
――普段はポジションを争うライバルでもあります。その4人が全員出ているという状態。4ボランチ(松井蓮之、工藤蒼生、鎌田大夢、武田英寿)が一緒に出ていた時に鎌田大夢選手に聞いたら「ちょっと嬉しかった」という話をしていました。
「その気持ち、わかりますよ。もちろんライバルですし、自分たちが練習から100%、120%出した結果で試合のピッチに立てるサイドバックは左右で2人。それに対してのリスペクトはしています。だからこそ、自分が試合に出た時には何ができるかということを大事にしています。千葉戦で言えば、相手のサイドの攻撃にストロングがあったので、そこはやらせない。4人同時に出た時、(石尾)陸登や真瀬(拓海)もゴール前に飛び込んでいったり、結果で何かを示そうとしていたと思う。みんなお互いを刺激し合いながらやれている良い関係かなと思います」
――その千葉戦で奥山選手は先発フル出場。MVP級の活躍でしたね。チームとしては9試合ぶりに敗れたRB大宮アルディージャ戦からの流れもありましたが、どのような意識を持っての試合でしたか?
「千葉はわかりやすく、サイドの攻撃が強みの一つ。どの試合を見ても田中和樹選手、椿直起選手は相手に脅威を与える存在。その対応を託されたという意味では、僕自身も失点0で抑えられたということは一つの成果です。だからこそ勝ち点3につなげたかったという思いはあります。でもチーム全体として(第15節)大宮での0-3からこれだけ立ち直ったんだというところ。目指すべきところは、今、千葉さんが立っている首位。そこにリーグ最後に立っていなければいけない。それだけの戦いは見せられたと思います。ここからまたギアを上げて、一戦一戦戦って、そこにたどり着けるようにしたいです」

――大宮戦からの一週間はどのような心持ちで準備をされていたのですか?
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Profile
村林 いづみ
フリーアナウンサー、ライター。2007年よりスカパー!やDAZNでベガルタ仙台を中心に試合中継のピッチリポーターを務める。ベガルタ仙台の節目にはだいたいピッチサイドで涙ぐみ、祝杯と勝利のヒーローインタビューを何よりも楽しみに生きる。かつてスカパー!で好評を博した「ベガッ太さんとの夫婦漫才」をどこかで復活させたいと画策している。