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伊沢拓司のスパーズ総括(おまけ)。24-25そして25-26の主役は?全選手ひとことレビュー

2025.06.02

the SPURs for the Spurt 〜N17から眺めるプレミアリーグ〜 #8

熾烈な上位争い、世界中から集まる有望株、終わることのないマネーゲーム……欧州サッカーの中心となったプレミアリーグが、なぜここまでの地位を手に入れたのか、そして今後どうなっていくのか。“クイズ王”としておなじみの伊沢拓司が、敏腕経営者ダニエル・レヴィ率いるトッテナム・ホットスパーを通して、その活況の要因と未来の展望を綴っていく好評連載。

第8回は、まだまだ書き足りなかった前回の延長戦として、歴史を作ったスパーズの英雄たち、32選手それぞれの2024-25シーズンを極私的に振り返りたい。

GK

グリエルモ・ヴィカーリオ
Guglielmo Vicario
28歳|イタリア代表

セービングは健在も、足下の技術はやはり不安あり。キャッチング後に球出しを焦り即回収される悪癖は、後半戦だいぶ減った。声を張り上げて味方を鼓舞する姿も頼もしい、頼れる守護神だ。

アントニン・キンスキー
Antonín Kinský
22歳|チェコ代表

冬にスラヴィア・プラハから加入。ボールを受けたときの落ち着きには目を見張るものがあるが、ディストリビューションの視野はそこまででもないか。第2GKとしてはもったいないほどにセービングも安定しているので、来季さらなる飛躍に期待。

フレイザー・フォースター
Fraser Forster
37歳|元イングランド代表

ルックスの貫禄には及ばないが、実年齢も37歳。ヴィカーリオ負傷初期には安定した活躍を見せたものの、本気のプレッシングを受けるとおぼつかないパス技術で失点を誘発した。今夏でお別れだが、サブのGKとしてはこの上ない存在感でチームを助け続けてくれた。素晴らしい貢献に感謝。

ブランドン・オースティン
Brandon Austin
26歳|イングランド

ついにスパーズでの公式戦デビューを飾ったユース出身の26歳。キンスキー加入後もELでは第2GKとして待機した。欧州の舞台で決定的なセービングも見せ、ファンからの信頼を勝ち得てきている。来季は数少ない「club trained枠」として、チームを陰から支えることになるだろう。

アルフィー・ホワイトマン
Alfie Whiteman
26歳|イングランド

たび重なる怪我もあって表舞台に立つことはなかったが、腐る様子も見せず、EL優勝パレードでは人一倍盛り上がっていた。新天地での活躍に期待。

DF

クリスティアン・ロメロ
Cristian Romero
27歳|アルゼンチン代表

出たら凄いがシーズンの1/3くらいはいない、それがロメロである。今季序盤は不調に喘ぎ、失点に直結するようなミスも散見された。長期の怪我を経た後半戦では圧倒的存在感を見せ、ELのMVPを獲得、リーダーとしての風格も出てきただろう。アトレティコ・マドリー移籍が囁かれているが、果たしてどうなるかがもっぱらの話題だ。残留してくれたらこの上ない安心感だが、CBの枚数は足りており、ロメロの完全な代役ができる選手など世界を探してもそういない。契約状況的には、代役を焦らずにひとまず現金化することも視野だろう。

ミッキー・ファン・デ・フェン
Micky van de Ven
24歳|オランダ代表

出たら凄いがシーズンの1/3くらいはいない、それがミッキーである。2年連続でプレミアリーグ最高時速を記録したスピードは脚への負担も半端なく、怪我から復帰した後半戦はかなり大事に使われていた。攻守への貢献はどちらも素晴らしく、チームへの忠誠心も強いこの選手をどれほど稼働させられるか、メディカルチームとコーチ陣の手腕が問われる。

ケヴィン・ダンソ
Kevin Danso
26歳|オーストリア代表

冬に獲って本当によかった選手。CB3番手ながらフル稼働、屈強なフィジカルでクロスを弾き続け、ときにゴリゴリと持ち上がる独特なスタイルで違いを見せた。EL決勝、途中出場してハリー・マグワイア(マンチェスター・ユナイテッド)を抑え続けた奮闘は陰のMVP。陽気な性格もチームにフィットしており、来季はより中心での稼働が期待される。

ラドゥ・ドラグシン
Radu Drăgușin
23歳|ルーマニア代表

昨季冬に加入したものの当初はあまり出番がなく、今季こそ活躍が期待されたが……ボールプレイング能力が低く、守備でも違いを感じるほどではなかった。もう少し低めのライン設定でこそ輝くタイプなのだろう。とはいえ、ACL(膝前十字靭帯)を怪我するまでの稼働率には大いに助けられたので、彼なくして今季を戦い続けることはできなかった。まだ若く、去就に注目が集まる。

ベン・デイヴィス
Ben Davies
32歳|ウェールズ代表

持っててよかったベン・デイヴィス、的な立ち位置で長らくチームに貢献してきた左利きのいぶし銀。フルバックもCBもできるユーティリティ性と、いつだって準備ができている真面目さが持ち味だったが、今年は後半戦中心に下降線をたどった。持ち味だった縦パスが引っかかりがちで、1vs1でも競り負けが続き……つらい。功労者ゆえ去就には情緒が入り込まざるを得ないが、残すにせよアップデートが必要なポジションである。

……

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Profile

伊沢 拓司

私立開成中学校・高等学校、東京大学経済学部卒業。中学時代より開成学園クイズ研究部に所属し開成高校時代には、全国高等学校クイズ選手権史上初の個人2連覇を達成。2016年に、「楽しいから始まる学び」をコンセプトに立ち上げたWebメディア『QuizKnock』で編集長を務め、登録者数200万人を超える同YouTubeチャンネルの企画・出演を行う。2019年には株式会社QuizKnockを設立しCEOに就任。クイズプレーヤーとしてテレビ出演や講演会など多方面で活動中。ワタナベエンターテインメント所属。

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