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32歳でJ1デビューを果たした新守護神の矜持。アルビレックス新潟・吉満大介が実感している使命感と責任感

2025.05.21

大白鳥のロンド 第23回

第17節終了時点で降格圏の19位に沈むアルビレックス新潟。苦境が続く中で、最後尾からチームメイトを鼓舞し続けているのが、今季に入ってJ1デビューを果たした32歳の守護神・吉満大介だ。J2やJ3で地道に経験を重ね、昨シーズンから新潟へと加わると、明るい性格でチームにも馴染み、周囲にポジティブな影響を与えている。そんな吉満が、試合に出続けていることで感じている今を、野本桂子に直撃してもらおう。

「チャンスを与えられたときには、自分のために、それ以上にチームのために頑張ろうと思う」

 4月26日、明治安田J1リーグ第12節・柏レイソル戦(△1−1)。アルビレックス新潟のGK吉満大介は、32歳にして、初めてJ1の舞台に立った。

 チームメイトから「ミツくん」と呼ばれ、親しまれる吉満は、レノファ山口FCから昨季、新潟に加入した。

 昨季は1試合、今季はここまで2試合、YBCルヴァンカップに出場。いずれも勝利に貢献している。

 毎日、試合出場を勝ち取るために、準備を重ねてきた。しかし初スタメンで心に広がったのは、喜びでも緊張でもなく、使命感だったという。

 「スタメンに選ばれることは、当たり前じゃない。それは頭にありつつも、『自分ができることをやらなければ』という責任感のほうが大きかった」(吉満)

 このとき、チームは1勝5️分5敗で19位。樹森大介監督は「日頃からいいパフォーマンスをしてくれていた。ルヴァンでもしっかり結果を出していた流れの中で、チームの現状を踏まえて、今一番いいパフォーマンスの選手を出そうという思いで起用した」と、会見で明かした。

 そこから5試合連続で出場し、ここまで1勝2分2敗。「少しずつ成長しながら、勝ちに持っていけるような立ち居振る舞いやプレーで、味方に安心感を持ってプレーしてもらえればと思います」と吉満。チーム最年長GKは、常に謙虚に、努力を続けている。

 プロ11年目の今季は、自分以外の3人のGKが入れ替わり、一からのポジション争いが始まった。コンディション良くキャンプに入れたが、不運にも一次キャンプの終わりに脚を傷めて離脱。しかし「開幕スタメンには縁がなかった」(吉満)とすぐに切り替え、コンディションを戻すことだけに意識を向けた。リハビリを経て復帰し、リーグ戦はJ1第4節・セレッソ大阪戦からベンチ入りを果たした。そして、開幕から11試合スタメンだった藤田和輝に替わり、ゴールを守ることになった。

 「僕はケガも多かったし、メンバー外の時期も長かったし、2番手の時期も長かった。試合に出て好調なときもあった。いろんな立場の人の気持ちを汲むことが、少しはできるようになった。だからこそ、チャンスを与えられたときには、自分のために、それ以上にチームのために頑張ろうと思う」

 1つしかない特殊な席。1つのプレーが勝敗に直結するポジション。そこに立つからには、勝利に徹するのみだ。

声を聞いているだけで戦況が伝わってくるようなコーチングも武器

 吉満の強みは、GKとしてのアベレージの高さ。

……

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Profile

野本 桂子

新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者を務める。新潟を舞台にしたサッカー小説『サムシングオレンジ』(藤田雅史著/新潟日報社刊/サッカー本大賞2022読者賞受賞)編集担当。現在はアルビレックス新潟のオフィシャルライターとして、クラブ公式有料サイト「モバイルアルビレックスZ」にて、週イチコラム「アイノモト」連載中。

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