エゴと献身、両方を追求して「もっと絶対的な選手に」。南野拓実、モナコ3年目の実感【現地取材】

おいしいフランスフット #16
1992年に渡欧し、パリを拠点にして25年余り。現地で取材を続けてきた小川由紀子が、多民族・多文化が融合するフランスらしい、その味わい豊かなサッカーの風景を綴る。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第16回(通算174回)は、ヒュッター監督いわく「チームにとって本当に重要な選手」として、モナコ在籍3シーズンで最多の公式戦43試合に出場(9ゴール5アシスト)した背番号18の今季を、リーグ1最終節後の談話とともに振り返りたい。
「来季は結果を出し続けるというのが一つの目標」
ASモナコは、2024-25シーズンのリーグ1をパリ・サンジェルマン、マルセイユに次ぐ3位で終えた。
前節リヨン戦での勝利で3位以上が確定していたから、今季の最大の目標であったCL出場権獲得はこの時点で達成。ゆえに選手たちは翌日から3日間、“ごほうび休暇”をもらったのだが、そこで気が緩んでしまった選手もいたのか、メンバーを大幅に変更した影響か、5月17日の最終節、敵地でのRCランス戦では4-0と大敗してしまった。
「2位か3位、チャンピオンズリーグには行けるからどっちでもいいけど、でもそこはプライドで、やっぱりマルセイユには負けたくない。自分たちの力を示して、自信を持ってチャンピオンズリーグに臨めなければいけないと思うので」
そう語っていた南野拓実にとっては悔しいエンディングだったはず。しかし予選なしでストレートインできる順位で終えられたのは、シーズン全体として見れば悪い結果ではなかった。
そしてこの最終戦、南野は腕章を託された。初キャプテンの試合が黒星に終わり、
「残念な結果だったので、それは悔しい」
と本人は感想を漏らしたが、
「彼はチーム内で最も経験豊富な選手であり、それが今夜の試合でキャプテンを任せた理由。彼はキャプテンにふさわしい」
と試合後の会見で語ったアディ・ヒュッター監督の信頼は、十分感じていたと思う。今季の南野を総括するなら、まさに「監督の信頼を背負っていた」という描写がぴったりだ。

20歳のエリース・ベン・セギルや23歳のマグネス・アクリウシュなど、モナコが誇る有能な若手たちはパフォーマンスにムラがあり、相棒のアレクサンドル・ゴロビンも長期のケガでシーズン後半はほぼ欠場していた状況の中、年齢的にも最年長の南野は、唯一と言っていいほど安定感のある選手だった。彼は毎試合、チームが大きく崩れないよう知力、体力をフル稼働して底の部分を支えていた。
それでも、リーグ戦で6ゴール3アシストと、昨季の9ゴール6アシストを下回ったことは、常日頃から「数字にこだわりたい」と口にしている南野にとっては物足りない結果だったようだ。
「数字の部分では全然満足してないし、もっと中心選手としてチームを引っ張っていく絶対的な選手にならないと、という気持ちの方が強い」
最終節を終えて、今季を振り返ると?という問いに対する南野の答えがこれだった。
「継続的なプレーはできていたけど、結果を出し続けるというところには波があった。最初と後半戦にしか出せなかったし、そういう意味では来シーズンは継続して結果を出し続けるというのが一つの目標になると思います」
利己と利他…「決めるか決めないかは自分次第」
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Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。