「極論を言えば、“戦術・久保”と言われるぐらいになりたい」好調・柏レイソルを支える右ウイングバック、久保藤次郎が携える確かな野望

太陽黄焔章 第24回
まるで何年も前から黄色いユニフォームを纏っていたかのようなフィットぶりだ。開幕から好調の続く柏レイソルで右ウイングバックの定位置を確保し、リーグ戦全試合に出場している久保藤次郎は、今季加入にもかかわらず、リカルド・ロドリゲス監督体制下のキーマンとして躍動し続けている。では、ここ1年半は難しい時間を過ごしていたという男は、どうやってこのブレイクを引き寄せたのだろうか。おなじみの鈴木潤が期待のニューカマーの今に迫る。
リカルド・ロドリゲス監督も認めたアタッカーの再生
久保藤次郎は3年前の2022年、藤枝MYFCでセンセーショナルな活躍を見せた。
特別指定選手としてプレーした前年の勢いそのままに、開幕戦のガイナーレ鳥取戦ではいきなり2得点を挙げるという華々しいプロキャリアのスタートを切り、同シーズンは10得点6アシストという成績を残して、藤枝のJ2昇格に貢献した。
その久保が、名古屋グランパス、サガン鳥栖を経て、今季から柏レイソルにプレーの場を移した。そして移籍1年目ながらリカルド・ロドリゲス監督のスタイルに完全にフィットし、鋭利な突破で右サイドを席巻している。
今季の柏に加わった新戦力は15名。大卒ルーキー4人を除き、彼らは「監督の意向に沿った補強」(布部陽功フットボールダイレクター)で獲得した選手である。
昨年12月9日の公式リリースの数週間前には、すでに柏の監督に就任することが内定していたと推測されるが、リカルド監督はおそらくその頃から「誰が自分の目指すスタイルに合うか」と、膨大量のJリーグの映像をチェックしたのだろう。そして、クラブの強化部と意見を擦り合わせながら、獲得希望選手をリストアップしていった。そこには久保の名前も挙がっていた。
リカルド監督の慧眼には恐れ入る。このスペイン人指揮官は、徳島ヴォルティスと浦和レッズを率いていた時代に、対戦相手として久保のプレーを実際に見たわけではない。つまり、映像の中で久保のプレースタイルを見極め、自分が目指すサッカーにフィットすると判断を下し、獲得へと動いたというわけだ。
第16節・ファジアーノ岡山戦はまさに「久保劇場」だった!
「自分の推進力やドリブルや点を取るところは、評価していると話してもらいました。要は自分の特長を全部出してくれれば、それがレイソルのためになるという話で、自分も自分の特長を出したいと思ったし、自分が特長で勝負できるところでサッカーをしたいということで、移籍を決めました」(久保)
監督の見立てどおりだった。プレシーズンで右ウイングバックの定位置を確保した久保は、開幕戦からリーグ戦全16試合に出場している。
第16節ファジアーノ岡山戦は、まさに「久保劇場」とでも言うかのような圧巻のパフォーマンスだった。
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Profile
鈴木 潤
2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。