「やりたいことをやれるような風土や文化がこのクラブにはある」原靖FDが語る、ゼルビア急成長の要因
GMが描くJクラブ未来地図#7
原靖フットボールダイレクター(FC町田ゼルビア)前編
若手を中心に多くの日本人選手の目が「外」に向き、世界的な移籍金のインフレ傾向に円安も重なり外国籍選手獲得のハードルも上がる――今のJクラブの戦力編成の難易度はかつてないほど高まっており、中長期の明確なクラブ戦略なしでチーム力を維持・向上させていくのは不可能だ。今連載では、そのカギを握る各クラブのGM/強化部長のビジョンに迫りたい。
第7&8回で話を伺ったのは、大分トリニータに始まり清水エスパルス、ファジアーノ岡山でチームの強化に携わり、23年からFC町田ゼルビアに着任した原靖フットボールダイレクター(FD)。前編では就任の経緯や“フットボールダイレクター”という肩書きに込められた意味、1年目にしてクラブを初のJ1昇格へ導いた2023シーズンの舵取りについて振り返ってもらった。
目指すスピード感から伝わった本気度、責任者としての覚悟
――2023年のシーズンからFC町田ゼルビアのフットボールダイレクターに就任しました。まずはその経緯から聞かせてください。
「22年までの4年間、岡山の強化部長を務めていた中で、以前から町田には結びつきの強い方々がたくさんいらっしゃいました。当時の大友(健寿代表取締役)社長を筆頭に、唐井直GM、三島俊幸強化部長、またランコ・ポポヴィッチ監督は私が大分で強化の仕事に携わっていた際の監督でもありました。塚田貴志通訳も旧知の仲間でしたし、丸山竜平スカウトも知っていましたから、町田の関係者の方々とは当初から遠くもなく、近過ぎるわけでもないという関係性でしたね。在任期間中の岡山もJ1昇格を目指していましたが、町田も今後新たなフェーズへと入っていく中で、『町田の強化の仕事に興味はありますか?』と当時の大友社長からお話がありました。最初のお話をいただいた中で『やりがいはありそうだ』という感想を持ちました」
――原FDが町田に来るきっかけを作った人物は、大友前社長という認識でよろしいでしょうか?
「そうですね。退任される大友社長が藤田晋新社長や上田武蔵代表取締役COOに話を上げた中で、藤田新社長が最終的な決定を下し、私が任命されました」
――クラブサイドのビジョンに関して、どのあたりが原FDの琴線に触れたのでしょうか?
「例えば多くのクラブは、我われ強化の人間の経験を頼りにしながら、5年後にはJ1に昇格したいなど、3年や5年のスパンでビジョンの話をされるケースが多いのですが、1年でも早くJ1に昇格し、ビッグクラブ化を目指したいというお話を耳にし、そのスピード感にはビックリしました。J1昇格に対するクラブ側が希望するスピード感と、『ぜひ力を貸してほしい』という気持ちに心が動きました」
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Profile
郡司 聡
編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、エルゴラッソ編集部を経てフリーに。定点観測チームである浦和レッズとFC町田ゼルビアを中心に取材し、『エルゴラッソ』や『サッカーダイジェスト』などに寄稿。町田を中心としたWebマガジン『ゼルビアTimes』の編集長も務める。著書に『不屈のゼルビア』(スクワッド)。マイフェイバリットチームは1995年から96年途中までのベンゲル・グランパス。
