もう「負けたらやばい」ランス兄弟の2025新春。主将退団と関根大輝加入、カップ戦の歓喜とリーグ戦の難局

Allez!ランスのライオン軍団 #6
大好評のスタッド・ランス取材レポートが連載化! 伊東純也と中村敬斗の奮闘ぶり、欧州参戦を目指す若き獅子たちの最新動向を、現地フランスから小川由紀子が裏話も満載でお届けする。
第6回は、フランスカップで劇的な16強進出も、リーグ1では1分2敗と昨年11月から7戦未勝利(4分3敗)で18チーム中13位まで後退……そんな目まぐるしい年明け2週間を振り返りたい。
中村&伊東が“連発”も連敗…「相当痛い」アグバ離脱
スタッド・ランスの2025年は、1月4日に敵地ジェフロワ・ギシャールで行われたサンテティエンヌ戦で幕を開けた。
伊東純也、中村敬斗ともに安定の先発出場だったこのリーグ1第16節。ランスの新年一発目のゴールを決めたのは、中村だ。
前半終了間近の42分、右SBアウレリオ・ブタのクロスが相手DFに当たって流れたボールが絶好のアシストとなり、トラップから左足で叩き込んで待望の先制点をゲット。16位と下位で苦戦する相手だけに、このまま“勝ち初め”といきたいところだったが、新監督アイリク・ホーネラン(昨年12月20日就任)の初陣を勝利で飾りたいと奮起したサンテティエンヌに後半3点を奪われ、3-1と手痛い逆転負けに終わった。
続くホーム初戦のニース戦(11日)では、今度は伊東が34分にゴール至近位置からの右足ボレーで同点弾を決めたが、試合を振り出しに戻して「よーし、ここから!」というところでPKを献上。後半、中村に代わって投入されたママドゥ・ディアコンが、約25mの距離からの鮮烈ボレーで1点を返すも、2-4で連敗となった。
新年早々、ランスの日本人選手2人はゴールゲットと幸先のいいスタートを切ったが、残念ながら結果にはつながらず、チームは11月23日の第12節リヨン戦から勝ち星なしの厳しい状況が続いている。
そんなランスを、さらなる打撃が襲った。キャプテンであり、ディフェンスの要だったエマニュエル・アグバドゥの離脱だ。
プレミアリーグのウォルバーハンプトンからのオファーは、2000万ユーロ(約32億円)。27歳のDFにこの金額は、いくらチームの主力といえど、クラブが断れるものではなかった。
昨シーズン末に前キャプテンのユニス・アブデルアミドが去り(→サンテティエンヌ)、“アグバ”新キャプテンの下、新体制が機能し始めていた矢先。後方からのロングボールで攻撃チャンスもクリエイトしていたCBは、同じ左サイドでプレーする中村との相性も良かった。
彼は中村とのコンビネーションについて、こんなふうに語ってくれていた。
「昨シーズンはそれほど多くのゴールを決めていなかったケイトが、今シーズンはより自信をつけているのがうれしい。今シーズンは同じサイドでプレーしているから、彼との連係も楽しんでいる。僕たちはよく話をするし、コミュニケーションを取っていて、僕自身、いかに彼にやりやすくプレーさせられるかを常に考えて動くようにしている。
去年、彼にこう言ったんだ。『お前は本当に優れた素質を持った選手だ。だからあとは結果がついてくるだけだぞ』って。だから今シーズン、コンスタントに点を取るようになってすごくうれしい。キャプテンとして、チームのみんなに自信をつけさせてあげることも、自分の役割の一つだと思っているからね」

ロッカールームでは、FWのウマル・ディアキテと一緒に歌って踊って場を和ませていた盛り上げ隊長。伊東と中村が日本版ランス兄弟なら、アグバとディアキテはコートジボワール版ランス兄弟だった。
「チームとしては相当痛いです……」
伊東もアグバの離脱を惜しんでいる。
「今のチームはそんなに選手層が厚いわけじゃないから、ディフェンスの良い選手が抜けるのはけっこうきつい。彼は強さもあったので、ロングボールや1対1のところでも跳ね返してくれてたんですけど、今はシンプルにそこでやられたり、裏一本でいかれたりっていうことが多い……」
同じく中村も「相当響いていると思います」と表情を曇らせた。
「キャプテンで(精神的にも支えで)、ボールを持つのもうまかったし、プレシーズンからずっと彼が(自分と同じサイドの)左をやっていたから。それが先週からいなくなってしまったので、正直、簡単ではないですよね……」
「純也くんが蹴る方向を言ってくれないから、結局自分で決めたんです」
そんな試練の渦中にあるランスにとって、明るい話題は14日に行われたフランスカップ、ラウンド32での勝利だ。
アマチュアクラブも参加している大会ながら、よりによって相手はリーグ1の強豪モナコという厳しい対戦カード。そしてこの日も12月14日のリーグ対決(0-0)と同様、伊東、中村、そしてモナコの南野拓実の日本代表3人が先発でそろい踏みした。……



Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。