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数センチの差が結果を分ける――厳格なオフサイド判定に賛否両論

2020.10.31

 VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)で厳格にオフサイドを判定するのは果たして正しいのか――。世界に先駆けてこの制度を導入したイタリアで、そんな議論がなされている。きっかけは10月28日のUEFAチャンピオンズリーグ、ユベントスvsバルセロナ戦で、アルバロ・モラタのゴールがことごとくオフサイドの判定で取り消されたことだ。

数センチ単位のオフサイド

 その数、実に3つ。しかもリプレイ画像で確認したところ、判定を分けたのは数センチ単位でのポジショニングだった。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は「単独で3ゴールが取り消されたのはCLでは史上初めて」と報じた。

 もっとも、オフサイドの判定については「VARの裏付けも得られて正しいもの」としており、ユベントスファン寄りの論調で知られる『トゥットスポルト』ですら「数センチ単位ではあるが、オフサイドがあったのは事実」とジャッジを評価している。何より、ユベントスの選手や関係者からの抗議は出なかった。

 だが、システムの運用方法については批判も出ている。それを口にしたのは、欧州サッカー連盟(UEFA)のアレクサンドル・セフェリン会長だ。

 10月29日にイタリアで行われたオンラインイベントにリモート出演し、「運用はもう少し明らかなケースに限定されるべきではないかと考えている。いくつかのケースでは、判定までにあまりにも長くプレーの時間を止めてしまうので、サッカーにとっては良いことではない」と発言。「私にとってはハンドの解釈や数センチ単位でのオフサイド、またGKが数センチ、ラインから飛び出していただけで反則とみなされることには強い疑いを抱いている」とした。

 もともと「鼻の長い人がいたらオフサイドに引っかかる」と数cm単位で判定される規則に否定的で、そこに改めて言及をした格好だ。

現状のVARに賛否両論も

 この意見についての反応は様々だ。かつてウディネーゼなどの監督を務め、現在はテレビ解説者となっているフランチェスコ・グイドリン氏は『コリエレ・デッラ・セーラ』に対し「もしこの規則を否定すれば、判定が恣意的だとの批判で再び混乱が起きる。スペクタクルなゴールが取り消されるリスクはあるだろうが」とVAR制度を支持。

 一方で、『トゥットスポルト』などは「肩が出る、出ないはせいぜい4、5cm程度の差で、時間にして約50分の1秒。VARは毎秒20〜30フレームの映像で判断されるから、ヒューマンエラーが起こる可能性は常にある」と論じた。

 イタリアのセリエAにも目を通せば、VARによってゴールが取り消されるケースは既に3回あった。9月27日のスペツィアvsサッスオーロ戦で、フランチェスコ・カプートが3ゴールを取り消されている。数センチ単位での厳格な判定が今後も維持されるのかどうか、注目が集まる。


Photo: Getty Images

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アルバロ・モラタバルセロナユベントス

Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。

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