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「世紀の凡ミス」だけ拡散されるのはアンフェア。伝えたい17歳MFの“リベンジ”

2020.09.30

 ベルギーリーグ1部のメヘレンに所属するMFアステル・フランクスが、9月26日に行われたシント=トロイデン戦で2得点を挙げ第2節以来、5試合ぶりの勝利に貢献した。

 このフランクスは2週間前の第5節オーステンデ戦でゴールからわずか1m、 しかもGKが飛び出し無人の状況で、ボールにつまずいてしまい転倒。最後は相手DFにクリアされてしまうという致命的なシュートミスを犯していた。そのシーンはSNSを通じて「世紀の凡ミス」として世界中に拡散され、日本の一部ニュースメディアにも報じられていた。

 しかしそのミスから2週間後、同じホームのAFASスタディオン・アハター・デ・カゼルネにシント=トロイデンを迎えた一戦で60分と64分にゴールを挙げ、チームは2-0で勝利。フランクスはこの試合のマン・オブ・ザ・マッチに選出された。

 ベルギーメディア『sporza』のインタビューに答えたフランクスは、「この2得点はチームのためのもの。自分自身のミスを取り返すためのものじゃない。勝てて良かった」と安堵の表情を見せていた。

 メヘレンのボウター・フランケン監督は試合後の記者会見で、オーステンデ戦でのミスに触れた記者に対し「やめなさい。あなたの持っているメモは後ろに置いてくれ。その話を蒸し返さないでくれ」と静止。さらに「彼がミスを恐れることなくプレーしたことを本当に誇りに思う。彼が良いプレーを続けることで、その名が世界中に知れ渡ることを願っている」と続けた。

 キャプテンのロブ・スホーフスは「僕が17歳の頃は体重50kgしかないガリガリの体型だった。彼がこの年齢ですでにこの場にいるというのは本当に素晴らしいことだ。チームのために一生懸命プレーすれば、彼はトッププレーヤーに成長するだろう」と称賛している。

リバプールやマンチェスター・シティも注目する逸材

 現在17歳のコンゴ系ベルギー人のフランクスは、2019年8月9日に行われたリーグ第3節アンデルレヒト戦でプロデビューを果たし、昨シーズンは9試合に出場した。シーズン終盤からレギュラーに定着し、第26節アンデルレヒト戦ではプロ初ゴールを記録。昇格組のメヘレンを6位まで導く活躍を見せた。

 セントラルハーフを主戦場とし、U-19ベルギー代表でも活躍。ケビン・デ・ブルイネやユーリ・ティーレマンスらと比較され、アンデルレヒトのMFヤリ・フェルスハーレン、FWジェレミー・ドク、スタンダール・リエージュのMFニコラス・ラスキンなどとともに注目されているティーンネイジャーだ。

 選手の市場価値や移籍記録をまとめたドイツメディア『transfermarkt』では市場価値が500万ユーロ(約6億円)とされ、昨シーズン終了後にはリバプール、マンチェスター・シティらが獲得に興味を示していることが話題になっていた。

SNS上では“挽回”できない

 2週間前のフランクスのミスは、放映権を持つ『Elevensports』のソーシャルメディアに投稿されるとすぐさま世界中に拡散された。Twitterではオランダ語アカウントで4400を超えるリツイートと8200を超えるいいねがつき、その他サッカーメディア、個人アカウントなど世界中の言語で転載もされている。

 対するシント=トロイデン戦での2得点は、メヘレンの公式アカウントが動画付きで「安心した。アステルとチームとファンと一緒に」と投稿。『Elevensports』も動画を投稿している。

 センセーショナルなミスが拡散される一方で、その後活躍したシーンはベルギー国内でこそ取り上げられても、お祭りのように騒いでいた世界中のメディアやSNSで注目されることはほとんどない。フランクスはピッチ上で数々の素晴らしいプレーを表現しており、大ミスは全体の中の一つに過ぎないにもかかわらず、世界的には「世紀の凡ミスの選手」として記憶されてしまう。

 実際、日本でもこのニュースでフランクスのことを知った方はもちろん、シント=トロイデンの試合を追っていたとしても、2ゴールを挙げたフランクスがあのミスを犯した選手と同一人物だと認識していない方が圧倒的に多いであろう。

 ミスが消えることはないが、いつの日かフランクスが世界的な選手に成長して、この出来事が「若い頃はあんなことがあった」と別の意味で笑い話になるよう願いたい。

Photo: Getty Images

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アステル・フランクスメヘレン

Profile

シェフケンゴ

ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。