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リーグ戦再開に向けビデオ会談するも、すべての決定は先送りに

2020.04.24

 イタリアサッカー連盟(FIGC)は4月22日、イタリア政府に対してセリエAをはじめとしたサッカーのリーグ戦再開のための安全基準案を提出した。新型コロナウイルス感染症対策が一部緩和される5月4日以降の練習の部分再開は認められたが、リーグ戦再開の期日などについては決定を先送りされた。

許可されたのは個人練習のみ

 4月22日、ガブリエレ・グラビーナ会長をはじめとしたFIGCの幹部、またイタリアサッカー選手協会(AIC)のダミアーノ・トンマージ会長らは、スポーツ省のヴィンチェンツォ・スパダフォーラ大臣や医療専門者とともにビデオ会談を持った。

 そして、その場で保健当局者や医師なども交えて作成された安全上の保安規定案を提示。合宿を敷いて部外者との接触を減らすことや、選手内部でグループを細分化して段階的なメニューを組んでトレーニングにあたること、またロッカールーム を使わないことなどの細かな安全基準が記されていた。

 しかしながら、スポーツ省が活動を承認したのは5月4日からの個人練習のみ。全体練習の開始時期、またリーグ戦の具体的な再開期日については、再開の決断を下さなかったという。

 スパダフォーラ大臣は同日に行われたイタリア上院議会の中で、政府の立場を説明。「経済面のみならず、社会面などへの影響を考えても(リーグ戦)再開は必要なことだ」とセリエA再開の意思に賛成した一方で「要望が大変多い個人スポーツの野外活動も含め、再開については専門者委員会と話し合って今後に検討したい」と述べた。

安全基準案は評価されたが……

 『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によれば、スパダフォーラ大臣はFIGCから提示された安全基準案自体には「非常に素晴らしい仕事だった」と評価していたという。しかしながら、段階的な活動の許可についても保険当局による審査が必要だ、との立場を崩さなかった。

 複数の地元紙によれば、医師の中には感染者が新たに出た時の扱いに疑問を呈したり、「サッカーボールもウイルスを媒介する可能性がある」と主張したりした者がおり、ビデオ会談中に論争となったという。

 現在イタリア政府は社会活動を再開させるにあたっての新法令を策定中だが、性急な活動制限の緩和に難色を示す声が政府内外から強く出ている。ジョギングなどの”解禁”についても医療関係者から慎重論が上がる中、無観客での試合開催は言うまでもなく、練習であっても現時点での認可は避けたとみられる。

 AICのトンマージ会長は「現在、スタジアムの環境は(感染症対策上)試合を開催できる条件にない。安全がどれだけ確保されるのか、あと2、3週間で様子を見て、どのような保護措置が可能となるのかを検討してほしい」と決定の先送りに賛成していた。

 複数の地元紙は「5月18日から合同練習が許可される」との見通しを立てているが、正式な決定はない状況。各クラブにとっては、再開に向けたプログラムが立てられないまま個人練習のみが再開される、という微妙な状況になった。

 欧州サッカー連盟(UEFA)からは、リーグ戦の遂行と8月2日までの順位決定が迫られている。カルチョの世界の暗中模索は今後も続く。


Photo: Getty Images

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Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。

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