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コロナ禍が招いた悲劇…将来有望な19歳のGKが自ら命を絶つ

2020.04.20

 新型コロナウイルス感染拡大の勢いは止まらず、アルゼンチンサッカー界でも活動再開の具体的な目処がまだ立たず、先が見えない状況下で、選手たちをはじめとする関係者たちは誰もが経済面での不安を抱いている。

普段は多くの観光客でにぎわうボカ地区の「カミニート」も、今は閑散としている

 収入減による報酬未払いのケースはどのクラブでも見られ、全職員に期日どおり給与が支払われたのは、4月中旬時点でボカ・ジュニオールのみ。スーペルリーガ(アルゼンチン1部リーグ)には4月分のテレビ放映権が支払われ、全クラブに配当金が送られたが、それでも最低限の経費を補うだけで精一杯という状態だ。

 メディアはSNSを駆使して選手のインタビューをライブで配信したり、NGOとタイアップして選手たちが参加するビデオゲームのトーナメントを放送したりと、様々な工夫を凝らしながら明るい話題を提供しようと試みているが、そんな中で非常に悲しいニュースが飛び込んできた。コロンの下部組織に所属していた19歳のGKアレクシス・フェルリーニが、自らの命を断ってしまったのだ。

クラブとの契約非更新が悲劇を呼ぶ

 昨年のコパ・スダメリカーナで準優勝に輝いたことで国際的知名度を高めたコロンは、“才能の宝庫”と言われるサンタフェ州のクラブだ。同州の下部リーグにはアルゼンチン全土からスカウトが訪れることで知られており、フェルリーニも注目される人材の1人だったが、去る4月15日、突然自殺を図った。

 父親の話によると、フェルリーニはコロンとの契約が更新されなかったことでひどく落ち込んでいたという。

 「家庭に問題があったわけでもなく、ガールフレンドとも仲良くしていたが、コロンとの一件から急に態度が一変し、私の手元からいなくなってしまった。クラブの役員たちは若い選手たちをどれほど傷つけているかわかっていない」。父親はそう語り、契約が更新されずフリーになる若手に対してクラブ側からサポートがなかったことを責めた。

 フェルリーニの父は「アルセナルとプラテンセが獲得に興味を示していたが、交渉する間もなかった」とも語っているが、4月19日時点でこの件に関するコロン側からの声明は公表されていない。

抑うつ状態の若者が増加

 アルゼンチンではちょうど20年前の2000年4月、21歳の若さで自殺したサンロレンソ所属のMFミルコ・サリッチのことが追想されていたばかり。

 サリッチの場合は、負傷のためにレアル・マドリードからのオファーを断念しなければならなかったところにガールフレンドとの個人的な問題が重なり、精神的に大きな負担を抱えたことが要因とされている。

 3月20日から始まった強制隔離措置下にあるアルゼンチンでは、現在国民の3人に1人が抑うつ状態にあり、その大半が25歳以下の若者という統計(注:アルゼンチン国立科学研究所(CONICET)と脳・認知科学財団(INECO)による調査結果)が出ている。

 今回のフェルリーニの悲報を受け、サッカー選手に限らず、若者を対象としたメンタルケアのさらなる必要性が叫ばれている。


Photos: Chizuru de García, Getty Images

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Profile

Chizuru de Garcia

89年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。