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堂安律が苦境のPSVを救う。カギを握った“自己制御”

2019.12.08

 サッカーの世界では「ピッチの上は嘘を付かない」とよく言われる。エールディビジ第15節エメン戦でPSVの選手たちが見せたプレーマナーは酷いもので、レフェリーの判定や相手のファウルに文句を付け、味方同士でも罵り合っていた。誰がどう見てもチームの雰囲気は最悪だった。

雰囲気最悪。指揮官解雇情報も

 PSVにとってエメンは格下だったが、結果は1-1の引き分けに終わった。10月19日の第10節ユトレヒト戦で3-0の完敗を喫してから、PSVは公式戦8試合で1勝3分5敗と名門にあるまじき不振に陥っていた。首位争いをしていたアヤックスとの差が開いただけでなく、AZに抜かれて3位に転落。UEFAヨーロッパリーグでは首位を走っていたはずなのに、グループリーグ敗退が決定してしまった。「ヨーロッパのベスト32に常に入ること」をクラブの目標として常に掲げているが、それも虚しく感じるほどの体たらくだった。

 「12月7日の第16節フォルトゥナ戦に勝てなければ、ファン・ボメル監督は解雇される」

 それがPSV内外の共通認識だった。

 フォルトゥナ戦では、キックオフからまだ間もない6分に堂安律が先制ゴールを決めたかに見えたが、副審がオフサイドフラッグを上げていた。この判定はVARにかけられ、かなり微妙だったもののオフサイドのまま試合は進んだ。不調のどん底にいるだけに、PSVにとっては喉から手が出るほどほしかった先制ゴール。しかし、選手たちはレフェリーの判定に文句を付けることもガッカリすることもなく、淡々と次のプレーにフォーカスしていた。その2分後、左からのクロスに堂安がヘッドで合わせて正真正銘の先制ゴールを決めた。

 その後もPSVは自分たちのプレーにフォーカスし続けた。ほしいタイミングでボールが来なくても、CKだと思ったプレーが相手のゴールキックになっても、相手からファウルを受けても、彼らはピッチの上で次のプレーをどうすべきかに集中し続けた。その結果、前半だけで3ゴール、後半にも2ゴールを追加し、5-0で完勝した。序盤、中盤、終盤と実に隙のない、PSVらしい、憎たらしいほどの強さを見せた勝利だった。

1週間で悪い雰囲気を払拭

 やはり、ピッチの上は嘘を付かなかった。この1週間、PSVはプレーマナーも含めてしっかり準備してきた。試合後のファン・ボメル監督は「お互いをリスペクトし合うこと、無駄なイエローカードをもらわないことなどに、我々はこの1週間取り組んできた」と認めた。堂安も「まさにその話をトレーニングで監督からされた」と証言した。トップフットボールの世界では、試合をコントロールすることと同じぐらい、自身をコントロールすることが重要だということを、エメン戦とフォルトゥナ戦のPSVは示してくれた。今から思うと、PSVの敵は自分たち自身だったのかもしれない。

 堂安の先制ゴールがPSVとファン・ボメルを救った――と書くと盛り過ぎのような気もするが、助けになったのは確かだろう。堂安にとっては「良いプレーをしても結果を出せない」という批判のあった自分自身を救うゴールにもなった。

 この勝利にファンも救われた。そしてアフェライが2年ぶりにピッチに立ち、さらにPSVのポジティブなムードは高まった。

 だが、本当のテストは次節、敵地でのフェイエノールト戦だ。燃え上がるスタディオン・フェイエノールトで苦境に陥っても、若きPSVは自分たちをコントロールできるのだろうか。


Photo: Getty Images

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PSV堂安律

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中田 徹

メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。