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ブンデス監督たちも我慢の限界? 「ドイツで再び仕事をするとは思えない」

2019.06.22

ブンデスリーガの監督を務める難しさ

 6月17日付の『キッカー』で、現在のブンデスリーガの監督の取り扱い方について、疑問符を付ける特集が組まれた。現在、ドイツのサッカー界の“ご意見番”として絶対的な立場を築いているマティアス・ザマーは、自国の監督に対する人々の態度が「リスペクトに欠け、傲慢なまでになっている」と警笛を鳴らした。

 たとえば、ブルーノ・ラバディアはボルフスブルクをヨーロッパリーグ出場権獲得に導きながらも、退任に追い込まれた。ラバディアは、「大金が動くようになって、監督を取り巻く状況はますます難しくなっている。背後では、多くの人間があれこれ関与してきて、多くの場面で“政治”が行われている」と今季の状況を振り返った。

ボルフスブルクを躍進させたものの退任が決まったラバディア監督

監督の仕事の変容…クラブのブランディングの中心

 今年の1月からイングランド・プレミアリーグのサウサンプトンの監督に就任したラルフ・ハーゼンヒュットルは、6月13日の『シュポルト・ビルト』のなかで、こうした状況に自身の見解を述べている。ハーゼンヒュットルは、イングランドとドイツの監督の在り方を比べながら、「現時点では、もう一度ドイツに戻って監督を務めるとは、思えないな」と話した。その理由として、「イングランドでは、監督はドイツとは全く違ったステータスを享受することができる。それに加えて、リーグ自体も信じられないほどに面白い。今の仕事にとても満足しているよ」と説明し、監督に対する周囲のリスペクトの違いを挙げている。

 さらに、ハーゼンヒュットルは、17日付の『キッカー』のなかで、現代の監督の役割が大きく変化し、難しいものになっていることも説明している。

「現代の監督は、常に注目を集めている。優れたトレーニングをして、結果を残すだけではダメなんだ。クラブの“顔”であり、最も重要な“アンバサダー”でもなければならない。クラブのブランドと哲学に対する責任を背負って、それを外に向かって発信しないといけない」

 さらに、「この数年、ドイツでは監督の立場は、年々弱まり続けている。この動きは不健全なものと言える。(クラブは)すぐに監督を交代できるように準備を進めている。継続性なくして、成長なんてありえないにもかかわらずにね」とドイツ国内の現状を嘆いている。

メディア対応に疲弊するドイツの監督たち

ドイツよりもイングランドの方が仕事がしやすいと語るハーゼンヒュットル監督

 イングランドでは、基本的にトレーニングが非公開で、静かに仕事ができるため仕事に集中しやすいとも語る。

「毎日のように、ある選手を起用しなかった理由や、3バックに並びを変えた理由なんかいちいち説明する必要もないんだ。ブンデスリーガの監督たちは、公の場でも絶えず自分の正当性を主張しなければならない状態に置かれており、彼らを疲弊させてしまうんだ」

 リバプールのユルゲン・クロップやパリ・サンジェルマンのトーマス・トゥヘルらの例を見ればわかるように、欧州でもネームバリューを獲得した監督たちの海外流出も、これから加速していくことになりそうだ。

Photos : Getty Images

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Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。