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リヨン、英雄ジュニーニョがSDに。時代が変われば頑固な会長も変わる

2019.06.18

リヨンの7連覇を支えたレジェンドが帰還

 2001-02シーズンの初優勝からリーグ・アン7連覇という黄金時代を築いたリヨン。7年連続優勝は、フランスで最多優勝回数を誇るサンテティエンヌやマルセイユでも成し遂げたことのない、同国において前人未到の快挙だった。

 そして、その立役者となったのが、崇高な右足キックをふるったブラジル人MFジュニーニョ・ペルナンブカーノだ。「世界最高のフリーキッカー」と言われたFKの名手で、リヨン時代にマークした100得点のうち44点が直接FKから、という驚きの数字を残している。

 リヨンの黄金期は、優勝初年度に入団したジュニーニョとともにあったといっても過言ではなく、親しみやすく、知的さも備えた名MFは、2009年のラストマッチでは涙で見送られ、いまだにリヨンのサポーターたちにとって不動のレジェンドだ。

 その彼が、10年の時を経てスポーツ・ダイレクターとして復帰にすることになり、リヨンは大いに湧いている。

 オラス会長がいかにジュニーニョを信頼しているかを象徴するのは、通常は自分自身が取り仕切る後任監督の人選をジュニーニョに委ねたことだ。アシスタント時代を含めて10年間チームを指導してきたブルーノ・ジェネジオ監督が続行しないことは、シーズンが終了する前から決定していたが、ジュニーニョは、その時からすでに後任選びに取り掛かっていたという。

 そうして彼が選んだ来季の新監督が、同胞のブラジル人、シウビーニョだった。「誰だっけ?」という人も多いと思うが、アーセナルやバルセロナ、マンチェスター・シティーでプレーしていた左サイドバック、と聞けば、「ああ、あの!」と思い出すことだろう。

 2011年に現役引退後は指導者に転向し、故郷のブラジルでアシスタント業からスタート。近年は、インテル・ミラノでロベルト・マンチーニ、ブラジル代表ではチッチ監督のもとでアシスタントを務めていたが、まだ正監督としてチームを率いた経歴はない。

ポリシーを変えてギャンブルに出たオラス会長

 そんなわけだから、サポーターの歓迎ムードとは対照的に、批評家は来季の“ブラジル人タッグ”には懐疑的といった感じだ。ジュニーニョは10年間リヨンから遠ざかり、シウビーニョにいたっては、フランスリーグとはこれまでまったく縁がなく、いわば未知の世界。

 リヨンはメンバー内に生え抜き選手率が高いため、「指揮官にはリヨンのDNAがある人材を」と常々公言しているオラス会長のポリシーとも矛盾する。これは相当なギャンブルである、と。

大きな決断を下したリヨンの名物会長ジャン・ミシェル・オラス

 しかしオラス会長は、「私はビジネスマンだ。ビジネスにリスクはつきもの。そして今回のことに関して言うなら、慎重に計算されたリスクだ」と自信ありげだ。

 ジェネジオのもと、失いかけていたサポーターの信頼を回復すること、なおかつ、ジュニーニョの持つブラジルとの強いパイプ、それがオラス会長の勝算である。

 実際、この人事は、オラス会長にしてみれば、大きなチャレンジだ。リヨンはこれまで、オラス会長が1987年に実権を握る前から、リーグ・ドゥ時代に3カ月間だけセルビア人監督が率いたことを除けば、一貫してフランス人監督がチームを率いている。昔はそれがフランスリーグの風潮だったが、外国人監督が増えている近年においても、オラス会長は「フランス語の話せる、フランス人のメンタリティーを持つ監督」にこだわってきた。

 しかし時代が変わればフットボール界も変わる。自分の考えを押し通す頑固な会長も、ここらでマインドチェンジの必要性に迫られた。

 なぜなら、リヨンのチーム力を持ってすれば、PSGを破ってリーグタイトルは難しいにしても、もっと良い成績は望めるはず、にもかかわらず2011−12シーズンのフランス杯を最後にトロフィーとは無縁、今季もリールに2位の座を奪われ、サンテティエンヌと争った末に、なんとかリーグを3位で終えるなど、サポーターを納得させられる成績が出せていないからだ。

 思惑どおり、レジェンドの帰還にサポーターたちは大喜びで、ジュニーニョの着任が発表された直後の試合では、まだ現地入りもしていないのに、FKの場面になると『ジュニーニョ!』のチャントが巻き起こったほどだ。

 ライバルであるマルセイユも、リュディ・ガルシア監督を解任し、来季はアンドレ・ビラス・ボアスが指揮をとる。そしてパリ・サンジェルマンも、2011-12シーズンから2年間スポーツ・ダイレクターを務めた元ブラジル代表レオナルドの、同ポストへの復帰を発表した。

 そろって主要ポストを刷新した上位陣のバトルは、プレシーズンから始まっている。

Photos : Getty Images

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Profile

小川 由紀子

1992年より欧州在住。96年から英国でサッカー取材を始め、F1、自転車、バスケなど他競技にも手を染める。99年以来パリに住まうが実は南米贔屓で、リーグ1のラテンアメリカ化を密かに歓迎しつつ、ブラジル音楽とカポエイラのレッスンにまい進中。