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ルイス・エンリケ不在のスペイン。代表監督のテレワークには限界が

2019.06.07

会見も、合宿も、試合も不在

 7日のフェロー諸島戦がEURO2020予選のスタートとなるスペインで、代表監督の不在という異常事態が続いている。指揮官は先月17日の招集メンバーの発表にも顔を見せず、記者会見は助監督が行った。

 ルイス・エンリケ監督が「重大な家族の問題」(連盟発表)でマルタとの親善試合の前にバルセロナへ急きょ戻ったのが3月27日のこと。あれから2カ月以上、視察のためにスタジアムを訪れることもなく、SNSでの発信もなく、一切の公の場から姿を消している。3日から始まっている合宿はもちろん、フェロー諸島戦も、10日のスウェーデン戦も不在にすることが決まっている。

 合宿では、助監督が作成した練習メニューにルイス・エンリケがOKを出し、エクササイズの様子をカメラ越しにチェックする、というやり方をしている。直ちに指示が出せないと意味がないので、ビデオではなく放送システムを使い、リアルタイムで見守っているという。スタッフミーティングはテレビ会議で行われているが、それがチームとの戦術ミーティングに採用されるのかはわかっていない。

 代表監督の不在に関して、連盟は「ルイス・エンリケを支え続ける」という姿勢を貫いている。新監督候補として乾貴士を率いていた元アラベス監督アベラルドの名が出たこともあるが、噂に過ぎなかった。私生活で大変な者のクビを切れない、という温情もあるのだろう。

最新技術にも、限界はある

 とはいえ、だからこそ職務をまっとうできない、というのも事実。練習が生中継されていると言っても、カメラのスイッチングをしているのは誰なのか、という疑問がすぐに浮かぶ。監督の視線は、誰がどうやってどんな基準で選んでいるのか?

 物理的な不在は最新技術では埋められない。熱気はスクリーンでは伝わらず、選手の顔色はカメラ越しにはわからない。現場の空気感が読めないのだ。テレワークには限界があることは、スペインの地から編集長をやらせてもらってよくわかった。試合と選手の状態が刻々と変わり、アクシデントだらけで、瞬時の判断が求められる監督業はなおさらだろう。

 代わりに指揮を執るロベルト・モレーノは、ルイス・エンリケの助監督として9年間の経験がある。戦術家で対戦相手の研究では右に出る者がいない敏腕アナリストだという。だが、コミュニケーターとしてはどうなのだろう? モチベーターとしてはどうなのだろう?

 将と参謀は違う。例えばテン・カーテはバルセロナ時代のライカールトの右腕として「影の監督」と呼ばれていたが、独り立ちしてからの彼はパッとしない。

 スウェーデン戦が終われば9月まで代表戦はない。その間にすべてが解決し、平常に戻っていることを誰もが願っている。

Photo: Getty Images

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スペイン代表ルイス・エンリケ

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。