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「ドイツサッカー大使」ルポ【中編】ザンビアの子供たちを支える女性

2019.06.07

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 ベルリンのドイツ外務省で行われた“ドイツサッカー大使”の授賞式。候補者として登壇した元女子代表のペトラ・ランダース氏は、サッカーを通じて、ザンビアをはじめとするアフリカの少年少女に向けた支援を続けてきた。授賞式後、本人にその活動のモチベーションについて聞いた。

ザンビアとの出会いと国際機関のサポート

──表彰おめでとうございます。あなたの活動のモチベーションとなるものは何でしょうか?

「『ディスカバー・フットボール』という組織の活動を通じて、アフリカ大陸の人々と知り合いました。ベルリンにあるこの組織は、世界中の女性を支援しています。ザンビアは、その活動地域のひとつで、私はそこでザンビアでの活動に行き着いたのです。私が現在支えているチームとは、2010年にベルリンで知り合いました。そして、彼女たちが自国に帰ったあとは、『今度は私がそのチームを訪問しなければいけないな』と思っていました。そして、2014年に、初めてザンビアに行くことができました。

 そうして、知人の1人が、私をアフリカの機関と一緒に、ザンビアにあるチーム(Bauleni United Sports Academy)をトレーニングできるようにネットワークを繋げてくれたのです。その機関にとっても、その試みは初めてのことで、どう進むかは分かりませんでしたが、私自身はオープンな気持ちで、とりあえず始めてみようと思っていました。そうして、初めての活動が終わったあとに、実際に自分の中にある“情熱”を実感でき、この活動をさらに続けたいと思うようになりました。

 それ以降は自費でこの活動を続けられるように、オーガナイズし始めました。最初の活動をきっかけに、現地の女の子たちとの活動をさらに広げていけると感じられたからです。そうして、今では毎年ザンビアを訪問しています。

 昨年からは『ストリート・フットボール・ワールド』という組織が、私に話を持ってきてくれました。この組織のオーガナイズで、ザンビアでの女性向けワークショップを開催することで、私自身も年に何度かザンビアに行けるようにしてくれたのです。この活動は、昨年の11月から始まりました。このストリート・フットボール・ワールドのプロジェクトでウガンダにも行けましたし、このような活動は私にとって、最も楽しめるもので、大好きな活動です。なので、今はこの活動にだけ専念できるように準備を進めています。私にとって、最終的なゴールはザンビアに移住することです」

「ドイツサッカー大使」表彰式で登壇するランダースさん

貧困と暴力の中でサッカーに取り組む子供たち

──アフリカの国々、特にザンビアが、そこまであなたを惹きつけるものは何でしょうか?

「あの国では、人々は皆、大きなファミリーのようなものです。これらの地域では、“人間らしくあること”が何よりも重要なことなのです。現代の生活で、私たちに欠けているものだと思います。これは感覚的なものですが、現地にいると、心が軽く感じられるのです。気持ち良く過ごせています。自分にとってフィーリングが合う人々が周りにいるため、自分自身も快適に過ごせるのです」

──なるほど。物質面での生活環境はどうですか?

「女の子たちは、裸足でサッカーをしています。練習用のボールも満足にはありません。この点では、私自身も、今サポートしてくれる人々を探しているところです。『このプロジェクトをお手伝いさせてくれないか』と言ってくれる人々が出てくると良いのですが……。

 性的暴行も多く、エイズのリスクも高い環境のなかで、現地の少女たちは情熱的にサッカーに取り組んでいます。その姿を見るのは、私にとっても好ましいものであり、コーチとしての働きがいもあるものです。ただ、彼女たちがサッカーをするための道具やリソースがまだまだ足りません。サッカー場も良いものではありません。土のグラウンドで、ゴミが落ちており、石も落ちており慣れるまでは散歩をするのもままならいようなところで、裸足でサッカーをしているのです。皆で協力し合えば、たくさんのことを実現できるはずです。今は、協力者を集めているところです」

──そういうことなら、このサッカー大使の主催である『キッカー』誌がクラウドファウンディングをしているので、お話をしてみると良いかもしれませんよ。

「ああ、そういうのもあるんですね! ありがとう、話をしてみます」

 今回の取材記事のラストとなる後編では、代表でプレーしたランダース氏に、ドイツ女子サッカー界の現状と展望を聞く。

→【後編】に続く

Photo: Deutscher Fußball Botschafter e.V.

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Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。