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スペインサッカー界に激震走る。八百長疑惑で元選手ら10名逮捕

2019.05.31

八百長疑惑で元レアル・マドリー選手ら逮捕

 28日、スペインに激震が走った。

 八百長の疑いで現役の選手や元選手、クラブ会長ら10人が逮捕され、逮捕者の自宅やクラブ本部が家宅捜索されたのだ。逮捕者の中には元レアル・マドリーのラウール・ブラボ、先日引退したばかりの元バジャドリー、ボルハ・フェルナンデス、ウエスカ会長のアグスティン・ラサオサらがいる。八百長が行われたとされる試合は、昨季の2部ウエスカ対ナスティック(0-1)と、今季の1部最終節のバジャドリー対バレンシア(0-2)と、3部リーグの1試合。

 このうちバジャドリー対バレンシアは残留決定済みの前者とCL出場権を懸けた後者の対戦で、モチベーションの差が大違いだから、私もバレンシアの勝利だろうとは予想していた。しかし、GKからのボール出しの信じられないミスから2失点するというのは、怪しいなという印象は抱いた。とはいえ、八百長の決定的な証拠とされているのは、ベッティングサイトでの不思議なお金の動きの方。どんな凡プレーであってもそれが故意であるのかミスであるのかは証明不可能だからだ。

 1部に昇格済みのウエスカと勝たなければ降格のナスティックでは、戦力差から前者の勝利とされていたが、試合の数日前から異常な額のお金が「ハーフタイムまで0-0でのナスティック勝利」に流れ込み始め、UEFAの八百長監視プログラムが警報を発し、実際に試合はその通りの経過と結果になった。バジャドリー対バレンシアのお金の流れの詳細は明らかにされていないが、やはりバレンシア勝利予想に試合直前から異常な額が賭けられたようだ。

アギーレ事件に相当する大きな衝撃

 八百長の仕組みは単純だ。マフィアがスペインのボス(これがラウール・ブラボとされている)に八百長を持ちかける。ボスが負けてほしいチーム側の選手(キャプテンの場合が多い)に接触。八百長が確定すればマフィアはベッティングサイトにお金を賭け、ボスを通じて関係者にお礼金を渡す。お礼金は試合前に半額が渡され、試合後に残りが渡される。試合が予定通りの結果にならなかった場合は、試合後のお礼金は渡されず、試合前のお金は次の八百長のためにマフィアへの“借り”となる。

 スペインで八百長と言えば、日本ではハビエル・アギーレ元日本代表監督のケース(現在審議中で判決はまだ出ていない)が有名だろう。今回のケースはそれに相当する大きな事件で、曖昧にせず徹底的に究明してほしいもの。今後、新たな動きがあれば引き続き報告していきたい。

Photo: Getty Images

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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