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プレミアのご意見番が正念場。カーディフの名伯楽に奇跡を

2019.05.01

ペップ相手にも臆せずジョーク

 今週末、今季のプレミアリーグから降格する3チーム目が決定するかもしれない。降格圏の18位にいるカーディフは、5月4日(土)のクリスタル・パレス戦に敗れれば降格が決まるのだ。

 肩入れするつもりはないが、カーディフが降格したら少し寂しくなる。そう思わせるのは、酸いも甘いもかみ分けた名物監督、ニール・ウォーノックの存在である。御年70歳のウォーノックは、イングランド・フットボールリーグで歴代最多となる8度の昇格を経験している昇格請負人でありながら、歯に衣着せぬ物言いで社会を斬る“ご意見番”なのだ。そして今シーズン、最もペップ・グアルディオラを困らせた人物でもある。

 4月上旬、本拠地にカーディフを迎えたマンチェスター・シティは開始早々に先制すると、相手の枠内シュートを1本に抑えて2-0で勝利した。だがペップは、危なげない試合運びにもかかわらず珍しく眉をしかめた。その横では第4審判のマイケル・オリバーが思わず噴き出していた。

 一体、何があったのか。きっかけはウォーノックだった。彼がペップに歩み寄り、何か声をかけたのだ。そのシーンについてウォーノックは「シティの選手が明後日の方向にロングボールを蹴ったのさ。だから私は『彼の名前は何て言うの? 我々が獲得するよ!』と言ったのさ」と、試合後に説明した。ペップも最初は何を言われたのか分からずに困惑したが、すぐに冗談だと理解したようだった。

愛すべき70歳の老将ウォーノック

 このようにウォーノックは、真剣勝負の中でも人を笑顔にさせるユーモアの持ち主だ。たとえば3月末のチェルシー戦でオフサイドのゴールを決められて敗戦を喫した際には、審判団の前に立ちはだかって睨みつけた。そして翌日のインタビューで「家に帰ったら妻に言われたよ。『もしあなたが審判に殴りかかっても私は止めなかったわ』とね。それほど不公平だったのさ」と不満をぶちまけた。そして、その発言が問題視されると冗談で返してみせた。

「妻を給料1週間分の罰金処分に科すよ。あれは妻が言ったことだしね。ただ、大半のファンは私の妻と同じ気分だったと思うがね」

 昨季、昇格を決めたときには「秘密兵器のおかげさ。チャーリーは5戦無敗なんだ!」と、孫のチャーリーくんを試合に招いたことが原動力だったと笑ってみせた。そんな陽気なウォーノックでも言葉を失ったことがある。それは1月にナントから加入するはずだったFWエミリアーノ・サラが不慮の飛行機事故で他界したときだ。「監督キャリア40年間で最も辛い1週間だ」と話し、監督業を辞めようとまで考えたという。「フットボールよりも大切なことがある。今回、それを痛感した……」。

 それでも「自分には奇跡を起こす仕事が残っている」と残留を目指して前を向いた。そして、これからシーズン最後の2試合に臨む。得失点差を考えると2連勝は絶対。そのうえで17位のブライトンが勝たないことを願うしかない。

 今後についてウォーノックは「会長が望むなら残るし、クビならば違約金は要らない」と男気を見せる。もちろん「私よりも適した人材が見つかるとは思わないがね」と、相変わらずのウォーノック節も忘れていない。

Photo: Getty Images

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カーディフニール・ウォーノック

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。