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紛争ぼっ発でにわかに注目。ラ・リーガ唯一のイスラエル人プレーヤー

2023.10.26

 イスラエルとハマスの戦争は、国際社会の世論を二分している。どちらへの支持を表明しても、反対側から激しく批判される状況だ。

ラ・リーガは沈黙を貫く

 スペインはオフィシャルでは欧州連合と足並みをそろえており、ペドロ・サンチェス首相はイスラエル支持を表明している。だが、政府内ですら意見の相違があり、連立政権のパートナーである左翼政党はパレスチナを支持し、ハマスを「テロリスト」と呼ぶことを拒否している。

 街ではイスラエル支持のデモをはるかに上回る数を動員してパレスチナ支持のデモが行われている。パレスチナ側に同情の声がより集まっているのは、歴史的背景とともに毎日ガザ地区爆撃の悲惨な映像がスペインで流されているからだろう。

 社会問題に敏感に反応してきたラ・リーガも沈黙を貫いている。ラ・リーガはロシアによるウクライナ侵攻の際には「侵略にNO」のメッセージとともにテレビのスコア表示の横にウクライナ国旗を添え、トルコとシリアで大地震が起きると「1分1分が重要だ」というメッセージと両国の国旗を添えていたが、今回は無反応。波風を立てたくないということだろう。

 そんな中、1人の選手の周りが騒がしくなっている。ション・バイスマン、ラ・リーガ唯一のイスラエル人選手である。

当局の要請で招集を断念

 2021-22シーズンにバジャドリーで20ゴールを記録した後はケガが多く低迷していたが、今夏にグラナダへと移籍。ケガも癒えて巻き返しを図ろうとした矢先に戦争が勃発した。

 代表戦が中止になり、スペインで調整中にハマスを非難するメッセージをSNSにアップしたことで脅迫を受け、先週末のオサスナ戦への同行を断念せざるを得なくなった。パコ・ロペス監督は招集するつもりだったが、警察当局から協力を依頼されては従わないわけにはいかない。

 イスラエル支持を表明したことでスペインでもテロの脅威が高まっており、脅威レベルを現状のレベル4から街への軍隊配置が可能になる最高レベルの5に引き上げるべきだ、という意見がある中、いち選手の警備に人員を割くわけにはいかない、と説明されたのだった。

 オサスナ戦では、本人不在でも「パレスチナ万歳! バイスマン死ね!」などのコールが過激なウルトラスたちから起きた。一方、バイスマンは「気分転換になるから」と、ひと際熱心に練習に取り組んでいる、という。

 ウクライナに続き、イスラエルでも起きた戦争に、欧州もスペインも無関心でいられず、欧州とスペインのサッカー界が揺れている。戦いは芝生の上でのみ行われてほしいものだが、人類の歴史は実質的に戦争の歴史なのに対して、サッカーの歴史は2世紀足らずしかないのだ。


Photo: Getty Images

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グラナダション・バイスマンバジャドリー

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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