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上田綺世を獲得したセルクル・ブルッヘとはどんなクラブか

2022.07.15

 鹿島アントラーズに所属していた日本代表FW上田綺世が、7月1日にベルギーリーグ1部のセルクル・ブルッヘに完全移籍した。J1得点ランキングでトップに立つ日本屈指のストライカーが、いよいよ欧州挑戦となった。

戦前は3度の優勝を誇る古豪

 セルクル・ブルッヘは、地元ブルッヘの学生グループによって1899年に設立された。第二次大戦前はベルギー屈指の強豪となり、1910-11シーズンに初優勝を飾ると、1926-27、1929-30シーズンに優勝を飾った。地元ライバルのクルブ・ブルッヘとは成績では大きく水を開けられているものの、ベルギーでは古豪の一角として知られている。

 戦後は1950年代、60年代に3部降格を経験するなど苦しい時期を迎えたが、70年代からは安定して1部に在籍。クロアチア出身で1994年W杯にて活躍したベルギー代表FWヨジップ・ウェバー、かつてはアフリカ屈指のアタッカーとして活躍したザンビア代表FWカルシャ・ブワルヤを輩出した。1部では中位から下位を定位置とするクラブだが、育成や選手発掘に定評がある。

2017年にモナコ傘下に

 長年1部に定着していたが、2014-15シーズンに2部降格。降格に伴いクラブは財政難に陥った。プロライセンス剥奪の可能性もあったが、2017年2月にフランス・リーグ1のモナコが買収を決定。安定したクラブ運営を保証される代わりに、モナコの若手選手が経験を積むための受け皿となった。そして2017-18シーズンに2部優勝を飾り、4シーズンぶりに1部復帰を果たした。

 1部復帰を果たした後は鹿島から日本代表DF植田直通を獲得し、モナコからも多数の選手が期限付き移籍で加わったが、復帰後の3シーズンは下位に低迷。年間予算はベルギーでも下位クラスとなる1000万〜1200万ユーロ程度ということもあって毎年のように主力選手が引き抜かれ、親クラブのモナコから送られてくる選手は短期間で期限付き移籍が終了するため、安定したチームづくりは望めなかった。モナコからの出資によって財政面での安定化は保証されたが、1部をキープするには困難な状況に陥っていた。

オーストリア人監督就任後、成績向上

 財政的には安定するも、毎年のように大幅に選手が入れ替わるチーム状況に振り回され、成績上はいつ2部に降格してもおかしくない状況に陥っていた。モナコのスポーツディフレクターのポール・ミシェルが方針転換を行い、モナコの若手選手の受け入れを中止してセルクル独自で選手獲得を行い、ユースからの若手選手も重宝する路線に変更した。

 2021-22シーズンは序盤こそ出遅れたものの、11月にオーストリア人のドミニク・タールハマー監督が就任してからチーム成績は一気に向上。攻守の切り替えが鋭くなり、失点数も大幅に減った。就任直後の11月から1月にかけて4連勝を二度達成したことが大きく、監督交代時には降格圏の17位に低迷していたチームを、一時期ヨーロッパカンファレンスリーグ出場権を争うプレーオフ2圏内の7位まで浮上する躍進を遂げた。

 タールハマー体制2年目になる今季は、さらなる躍進が期待される。エースストライカーとして活躍したラビー・マトンドは保有先のシャルケへ戻った(その後グラスゴー・レンジャーズに完全移籍)が、攻撃陣の主力メンバーであるボスニア・ヘルツェゴビナ代表MFディノ・ホティッチ、生え抜きの若手FWオリビエ・デマン、FWティボ・ソマーズ、トーゴ代表FWケビン・デンキーは、現段階では残留している。毎年選手の入れ替わりが激しいセルクル・ブルッヘだが、ポール・ミシェルの方針により昨季を踏襲するチームづくりを継続することになりそうだ。

 指揮官は[4-2-3-1]と[4-4-2]を併用する。GKにはフランスの年代別代表経験者で、アンデルレヒトで正GKを務めた経験があるトマ・ディディヨン、ブルガリア代表左SBディミタリ・ベルコフスキー、ヘントでCLベスト16の経験があるベルギー人MFハンネス・ファンデルブリュッゲンなど実力者がそろう。20歳前後の若手選手が多く、左右のWGは下部組織生え抜きのソマーズとデマンが務める。欧州カップ戦プレーオフ圏内である8位以内が視野となる、ベルギー中位クラスの戦力と見られる。

 昨季チーム最高の9得点を挙げたマトンドが退団したことにより、上田は1トップでの起用が有力視されている。FWデンキーや、CFでの出場も多かったソマーズがポジションを争うライバルになりそうだ。

 上田としては、Jリーグよりも大柄な選手が多いベルギーリーグ特有のプレー強度に慣れていくと同時に、ラストパスの供給役となるセカンドトップのホティッチ、左右のWGを務めるソマーズ、デマンとの連携の確立が求められる。シーズン中盤以降に躍進を遂げたが、二桁得点者が不在のため得点力に課題がある。昨季の成績を上回り、プレーオフ圏内に進出するためには、上田の得点が大きなカギになるだろう。


Photo: Getty Images

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セルクル・ブルッヘ上田綺世植田直通移籍

Profile

シェフケンゴ

ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。