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アーセナルではなくインテルへ。“ブレグジット”がもたらすアイルランド若手への影響

2022.01.28

 散々騒がれたイギリスによるEU離脱、いわゆる“ブレグジット”。これまではフットボール界に大きな影響は出ていないように感じたが、変化は間違いなく起きているという。

 昨年10月、U-17アイルランド代表がU-17欧州選手権の予選でアンドラに5-0で快勝した。それ自体はニュースではないのだが、その時のアイルランドのメンバーが新たな歴史を築いたという。控え選手を含めた試合メンバー20名の中に、1人もイングランドのクラブに所属する選手がいなかったというのだ。

16歳にしてイタリアへ

 スポーツ専門サイト『The Athletic』によると、アイルランドが年代別代表チームを国際大会に派遣するようになって以降、そこには必ずイングランドのクラブに所属する若手がいたそうだ。2年前のU-17代表を見ると、21名のうち実に11名がマンチェスター・シティやブライトン、サウサンプトンといったイングランドのクラブに所属していた。そう考えると、これこそ“ブレグジット”がアイルランドと英国のフットボール界に初めて明確な影響をもたらした瞬間なのかもしれない。

 これまで16歳以上のアイルランドの有望株は、若いうちに英国のクラブに引き抜かれていた。しかし“ブレグジット”により、2021年1月以降、英国のクラブはアイルランドの18歳未満の選手を獲得できなくなった。両親の都合で引っ越した場合など特例を除き、18歳になるまで待たなくてはいけなくなったのだ。その結果、アイルランドの若い選手たちは欧州本土のクラブに流れ出すこととなる。

 前述の試合でも、チーム内にはイタリアのインテルに所属する選手がいた。アンドラ戦でゴールを決めたFWケビン・ゼフィ(16歳)は、アイルランドの首都ダブリンの出身だ。これまでならアイルランドと関係の深い英国のクラブ、例えばアーセナルやマンチェスター・ユナイテッドに引き抜かれたはずだが、彼は昨年夏に地元のシャムロック・ローバーズからインテルへと巣立ったのだ。

欧州各国が視線を送る

 変化についてセント・パトリックス・アスレティック(アイルランド)の下部組織を統括するガー・オブライエンは「いろいろなところから連絡がくるようになった」と『The Athletic』に説明する。「フランスやイタリアの関係者が『スカウトを送りたい』と言ってくる。これまでアイルランドに興味を示さなかったベルギーやドイツのクラブも同じだ」

 “ブレグジット”の影響により、16歳でイングランドに渡るルートが断たれたアイルランドの有望株に、英国以外の欧州のクラブが着目するようになったのだ。セント・パトリックス・アスレティックに所属していたMFグローリー・エンジンゴも、昨夏16歳にしてフランスのスタッド・ランスに移籍した。U-19アイルランド代表のCBジェイムズ・アバンクワ(18歳)も先日、ウディネーゼへの移籍が発表されたのだ。こういった選手の大半には13、14歳の頃から代理人がついているため、今後さらに欧州本土への移籍が活性化されるという。

 その一方で、違った動きも出てきている。今年に入り、クリスタルパレスがアイルランドのドロヘダ・ユナイテッドから19歳のFWキリアン・フィリップスを引き抜いたのである。これまでならフランスやスペインの若手に目を向けたはずのパレスだが、“ブレグジット”の影響で彼らを獲得する際にも労働ビザが必要になった。一方で、英国とアイルランドには「共通移動承諾」が残っているため、アイルランドの若手ならば労働ビザを必要とせずに引き抜けるのだ。

 どうやら“ブレグジット”はアイルランドの若手に大きな影響をもたらしたようだ。16~17歳の若手がヨーロッパ本土に渡り始めた一方で、これまで注目されなかった18歳以上の選手がイングランドのクラブから重宝され始めたのかもしれない。今後も“ブレグジット”の影響に注目したい。


Photo: Getty Images

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アーセナルアイルランド代表インテルウディネーゼ

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。