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SNSからフットボール界へ。“ツイッター・スカウト世代”という新たな潮流

2021.03.04

 今、フットボール界では“ツイッター・スカウト世代”が活躍し始めているという。

 データや戦術といったアナリティックなスポーツ観戦が一般的になり、英国でもSNSを通じて分析に長けたエキスパートが知名度を高めている。英紙『The Guardian』が、新たな時代の分析官を特集している。

「エキスパートはSNSにいる」

 先日、イングランド2部のルートン・タウンは新たな“選手補強分析官”を雇った。それがツイッターでシェフィールド・ユナイテッドの分析を投稿して有名になったジェイ・ソシックである。ソシックは、大手メディアがあまり扱っていなかったシェフィールドUの分析を、彼らが下部リーグにいる頃からずっと投稿してきた。その詳細な分析は話題になり、2年前にはフットボールのデータ分析を提供する会社に誘われ、今回こうしてクラブチームで重職を任されることになったという。

 「僕は“ツイッター・スカウト世代”なんだ」とソシックは『The Guardian』に語る。ツイッター・スカウト世代とは、データ解析や戦術分析をSNSに投稿する若い世代のことで、日に日にその数は増えているという。それでもソシックのような成功例は一握りだと思ってしまうが、SNS経由でフットボール界に進出するエキスパートは増えるはずだとソシックは主張する。

 「今ではクラブスタッフもデータに精通している。でも、彼らは他の仕事が忙しすぎて、それほど深堀りできないはずだ。だからSNSに投稿している人たちに、まだまだ仕事が回ってくるはず。今、エキスパートはSNSにいるんだ」

インドからの“超リモートワーク”

 今は実際に選手を見る前に、映像分析やデータ解析でスカウティングのほとんどが完了する時代であり、コロナ禍の影響で現場に足を運べないからこそ分析官が重宝されるという。そんな“ツイッター・スカウト世代”で一躍有名になった青年がいる。インド出身の17歳、アシュウィン・ラーマンだ。

 13歳でネットにサッカー記事を投稿し始めたラーマンは、徐々に人気を集めると、2019年にスコットランドのダンディー・ユナイテッドからDMを受け取った。そしてインドにいながら、スコットランドのクラブで「スカウト兼分析官」を務めるようになった。8000km以上も離れた超がつくほどの“リモートワーク”をこなしているのだ。

 獲得すべき選手を探すのが主な仕事だとラーマンは『BBC』の取材に答えている。「どんなタイプの選手が欲しいかクラブから提示があるので、それに合った選手をデータベースから見付ける。実際にその選手を獲得する可能性が出たら、何時間も映像を分析してレポートを送るんだ」

 時差のせいで「不健康な生活習慣」になっているラーマンだが、まだ学生なので試験前は仕事量を減らしてもらうなど、柔軟に仕事をこなしているという。

 これからは、彼らのような“ツイッター・スカウト世代”がフットボール界を動かすのかもしれない。


Photo: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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