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鈴木優磨が得点量産、橋岡大樹が加入したシントトロイデンの今

2021.02.19

 鈴木優磨、シュミット・ダニエル、伊藤達哉、松原后が所属し、2021年1月には浦和レッズから橋岡大樹が加入したシントトロイデン。一時は最下位に沈むなど、今季は苦戦を強いられているが、監督交代後にチーム状況が回復傾向にある。

序盤から苦戦を強いられる

 シントトロイデンは第27節終了時点で8勝6分13敗の15位と苦戦を強いられている。今季はオーストラリア人のケビン・マスカット監督が就任し、[4-3-3]を軸に自らボールを保持して攻め込むサッカーを展開した。

 しかし、開幕戦では昨季2位のヘントから金星を挙げたものの、その後は勝利に見放され、一時は最下位に転落した。12月2日に行われた第11節順延分のムスクロン戦では残留争いの直接的なライバル相手に2-3で破れ、その試合後に監督は解任。マスカット体制では僅か2勝しかできなかった。

 12月12日にはペーテル・マース新監督が就任。かつてロケレンで2度のベルギーカップ優勝を果たしているベテラン監督は、システムを[3-4-1-2]に変更し、5バックで守備を固めつつ、両サイドから速攻を仕掛ける現実的な戦術を展開。第17節のズルテ・ワレヘム戦から3連勝を飾り、チームは降格圏から脱出。2月に入ってから連敗はしているものの、試合内容には改善の傾向が見えている。

ゴールを量産する鈴木優磨

 監督交代後は6勝7敗と着実に復調しているシントトロイデン。その原動力となっているのは、チーム最多の14ゴールを挙げている鈴木優磨だ。12月以降に10ゴールを量産しており、マース体制で得点力が開花したと言えるだろう。

 鈴木優磨が得点を重ねられるようになったのは、システムの変更が大きく影響している。開幕当初の[4-3-3]では主に1トップ、または右WGでプレーしていたが、ポストプレーを強いられることが多かったため満足に前を向いてプレーしたとは言い難く、シュートチャンスに恵まれていなかった。11月からは2トップも試されたが、アルゼンチン人FWファクンド・コリーディオやハイチ代表FWモーゼズ・ナゾンとの連携は十分に発揮できなかった。

 その状況を大きく変えたのは2人のベテラン、33歳のMFクリスティアン・ブリュルスと元ベルギー代表FWイロンベ・ムボヨの加入だ。技巧派で推進力のあるブリュルスと、ポストプレーに長けているムボヨの加入により、鈴木優磨の負担は大幅に軽減された。

 特にムボヨとのコンビは、ベルギーメディアでも「最高のデュオ」と評価されてされており、相手DFをムボヨが引き付ける間に鈴木優磨が死角から侵入してゴールを狙う形が確立されている。チームの不調時はすべて自分で打開しようとする姿が目立ち、フィジカルで勝るベルギーリーグのDFに跳ね返された場面も多かったが、現在はチームメートを生かしつつ、相手DFの隙を突いて得意なコースを狙っていく駆け引きのうまさでゴールを稼いでいる。

 2月に入り、ハイプレスで前線への供給源を潰しにくるオーステンデや、カウンター狙いのシントトロイデンに対してボールを持たせ、ゴール前のスペースを消すズルテ・ワレヘムなど、徐々に対策が講じられてきている。鈴木優磨が20得点を奪うには、より厳しさが増す相手を上回るプレーが求められるだろう。

新戦力の橋岡大樹に期待

 1月31日には、浦和レッズからDF橋岡大樹が2022年6月30日までの期限付き移籍で加入した。橋岡は2月12日からチームの全体練習に参加している。

 現在[3-4-1-2]のシステムを採用しているシントトロイデンでは、橋岡は3バックの一角、または右WBでの起用が有力視される。右WBは23歳のマクシミリアーノ・カウフリーズ、ソリー・サンコン、3バックではベテランのホルヘ・テイシェイラ、アンゴラ代表DFジョナタン・ブアトゥ、ナイジェリア人のジュニア・ピウス、左利きのディミトリ・ラバレーらがライバルになる。

 初の海外挑戦となる橋岡にとっては、ベルギーでのプレー経験ではライバルには及ばないため、試合出場のチャンスは容易には訪れないだろう。

 Jリーグに比べて体格に勝る相手が多く、高いインテンシティとピッチ全体を使ったダイナミックな試合展開でゲームが進行するベルギーでは、素早い状況判断、中長距離でのパス精度、スピードやフィジカルへの対応能力も、今まで以上に求められる。

 日本から移籍した選手は、リーグのスタイルに順応するまでに時間を要する傾向にあり、冨安健洋は初出場まで4カ月、現ヘンクの伊東純也はレギュラーに定着するまで2カ月を要している。

 橋岡はプレーに慣れていくことと、高さのある守備陣からポジションを奪うことという、容易ではないミッションが求められる。松原后と伊藤達哉はポジションを奪えず、出場機会に恵まれなかった中村敬斗はオーストリア2部のジュニアーズOOへ移籍した。多くの日本人選手がポジション獲得に苦労しているが、橋岡にはそうした状況を乗り越えてのレギュラー定着に期待したい。

移籍当初の日本人が苦戦する傾向にあるベルギーリーグで、橋岡大樹はどこまで健闘できるか


Photos: Getty Images

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シントトロイデン橋岡大樹移籍鈴木優磨

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シェフケンゴ

ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。

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