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リバプールが掲げる“This Means More” パートナーと共有する「ファミリー」の価値観

2020.08.10

ファンと振り返るリバプール優勝5つの理由】#4

「君たちが我われを王者にしてくれた」――トロフィー授与式でユルゲン・クロップが口にしたのは、5年間で「疑う者」から「信じる者」へ変貌を遂げたサポーターへの感謝の言葉だった。悲願のプレミアリーグ初制覇。歓喜の瞬間を夢見てリバプールを信じ続けてきたファンにとって、30年ぶり国内リーグ戴冠の理由は何なのか。経営、専門家、SNS戦略、ブランディング、データ……独自の視点で名門復活に迫る!

今回は、好評発売中の『リバプールのすべて』で、ロゴやユニフォームなどのデザインについて語ってくれたタクヤKOP氏に、リバプールの「ブランディング」を読み解いてもらった。

【リバプール優勝記念出版】

リバプールのすべて

リバプール優勝記念号

 フットボールクラブの収入には3つの柱がある。その1つ、「コマーシャル収入」――スポンサー料やグッズ販売を中心とする収入は、あとの2つ「マッチデー収入」「放映権収入」と比べ、自力で伸ばしていくことができるのが特徴だ。会計法人デロイトが毎年発表している『フットボール・マネーリーグ』のデータを見ると近年、総収入で上位のクラブは中長期的発展に不可欠なコマーシャル収入の割合を高めていることがわかる。

 その中でも著しい成長を見せているのがリバプールだ。2016年は1億1950万ポンド(約155億円)だった彼らのコマーシャル収入は、2019年に1.5倍以上の1億8590万ポンド(約242億円)まで成長。過去3年間でスペイン2強に次ぐ伸びを見せている秘密は、リバプールが掲げる明確なブランド戦略にある。

“This Means More”が示すブランド定義

 ここ数年にわたり、リバプールがマーケティングスローガンとして使っている言葉がある。

 “This Means More.”(ここにはそれ以上の価値がある)

 このフレーズの誕生の経緯を明かしたのは、2012年からリバプールでCCO(チーフ・コマーシャル・オフィサー)を担うビリー・ホーガン(編注:9月よりCEOに就任することが決定)だ。

 「この言葉は私たちがマーケティング会社に依頼した調査に基づいています。私たちのファン、ファンではない人々を調べ、『彼らにとってリバプールが何を意味するのか』を聞き取っていたのです」

 ホーガンのいう「マーケティング会社」とは、スポーツコンサルティングの第一人者であるオクタゴンのこと。業界最大手の企業とともにファンとクラブが抱くブランド像を擦り合わせていったリバプールは、自らを「ファミリー」と定義する。アンフィールドを家とし、同じ真っ赤なシャツを身に纏い、酸いも甘いも味わいながら支え合う存在――この「単なるフットボールクラブを超えた特別な関係性」を “This Means More”という言葉で端的に言い表しているのだ。独自の価値観を世界中のあらゆる企業に一目で理解してもらうために、シンプルな英単語3つの並びが採用されたのだろう。

「言葉」と「データ」の両輪でパートナー獲得

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ファンと振り返るリバプール優勝5つの理由

Profile

タクヤ KOP

LFCラボ共同代表。2005年、ジョン・レノンとジェラードが表紙のフリーペーパーをきっかけにリバプールに興味を持ちいつの間にかファンに。2017年よりLFCラボに参画。本業のWEBマーケティング領域の知識を活かしながら、サッカーにまつわるデザインやチャントなどのピッチ外を掘り下げる記事を執筆中。老後の夢はビートルズ研究家になること。