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ルディSD曰く「SDは移籍市場を担当する人ではない」。コモの革新を支える「横断型マネジメント」

2026.10.08

【特集】セリエAを革新するコモのビジョン#2

セスク・ファブレガス監督がピッチ上に表現するプレー哲学と、コモ湖を背景に街をプロデュースする独自のブランド戦略。2024-25シーズンのセリエA昇格からわずか2年でCLに初参戦しているコモ1907は今、欧州サッカーで最もユニークな存在だ。イタリアのプロビンチャーレだったクラブがなぜ、この短期間で異彩を放ちつつあるのか。その答えは、目の前の試合結果だけを追うのではなく、先を見据えた未来から逆算してチームを作る「ビジョン」にある。人材獲得と育成、移籍戦略、トップチームの戦術――それぞれの取り組みは別々に見えて、実は一つの思想によってつながっている。その革新のDNAを読み解く。

第1&2回は、クラブの強化責任者カルラルベルト・ルディSDのインタビュー前後編。移籍市場だけを管理するのではなく、監督、スカウト、データ分析、ビジネス、アカデミーまでを横断してクラブを動かすSDの仕事とは何なのか。セスクのゲームモデルを補強戦略にどう落とし込み、データと人間の眼をどう組み合わせるのか。さらに、コモ湖という街のブランドとサッカーをどう結びつけ、クラブの成長を持続可能なものにしていくのか。コモの「革新」を支える横断型マネジメントの実態に迫る。

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現代のSDに求められる「組織を横断して物事を理解し、把握する能力」

――スポーツダイレクター(SD)としての仕事についても少し聞かせてください。ノバーラのバンディエーラとして選手キャリアを送った後、引退してこの仕事を始めましたよね。ただ、そのキャリアの大部分はここコモで過ごしています。この7年間でSDの仕事は、一般的にもあなた自身についても、どのように変化しましたか。

 「それほど変わったとは思いません。私自身の中では変わっていません。ただ、人々がその役割に抱いているイメージと比べれば、間違いなく大きく変わりました。SDは、もはや単に移籍市場を担当する人ではありません。それはとても時代遅れな捉え方です。今日のSDは、あらゆる意味で組織全体のマネジャーです。異なる仕事のグループを管理し、調整し、クラブのビジョンと整合する戦略、そして行動を考え、手段を用意し、その過程を効率化し、革新の方向に進めていく。関連する異なる部門をつなげる接着剤でなければなりません。

 私は幸運にも、自分の仕事を常にそのように理解してきましたし、客観的に見て、現代サッカーはその方向に向かっています。それぞれの部門を束ねる存在、そして部門を横断する存在を見出し、管理し、調整する役割です。私の考えでは、SDを含む経営幹部には、縦方向の専門能力、つまりそれぞれの役割に固有の能力に加えて、組織を横断して物事を理解し、把握する能力がますます求められてきています。財務、ビジネスモデル、クラブのビジョン、技術・戦術、フィジカル、少しずつあらゆることに関わり、話し、動かすためです」

――あなたは1日や1週間をどのように過ごしていますか。いつもトップチームのトレーニングを見ているのですか。それともあちこちに出かけて、他の選手や監督を見ているのですか。

 「この7年間、私の仕事は何度も変わってきました。何年かゼネラルダイレクターも務めました。ただ今は、クラブが非常に高いレベルまで上がって、何事も成り行き任せにするわけにはいかず、異なる領域について部門を作り委任しなければ回らなくなっているため、私はセスクとトップチームと長い時間を過ごしています。それが、私の仕事にとって最も根本的なことだからです。よい仕事環境を作り維持するためには、それをコントロール下に置いておかなければならないからです。

 私は監督、そして選手に寄り添い、支えなければならない。そこにいることを通して場の力学をわかっていなければ、多くの動きを理解するのが難しくなります。もう一方で、私の役割に対する縦方向の専門領域であるチーム強化、補強を行うためにも、毎日セスクと一緒にいなければ、何気ない日々の会話を通して彼と感覚を共有し、本当の細かい違いを理解しなければ、選手を見つけるのが難しくなります。

 セスクほど優れた監督と一緒に仕事をする幸運がある時には、補強において重要なのは、単に能力の高い選手を獲得することではありません。彼の要求に応えることができて、なお能力の高い適切な選手を特定しなければならないのです」

「セスクにとって適切な選手」をどう見つけるのか

――ここで「適切」というのはどのような意味においてですか。技術・戦術的な細かい違いにおいてということですか。

 「説明するのは難しいですが、セスクにとって適切なMFは、例えば6番であれば、身体の向きを決して間違えず、いつも素早くボールを動かすMFです。8番なら、トランジションの切り替えも重要になってくる。彼と一緒にいて多くの時間をともに過ごすことで、その時々に、その役割にどんな種類の特徴が必要なのかを理解しなければならないということです」

――それに関連して言えば、ルイス・ミリャには驚かされました。寡聞ながら名前すら知らない選手だったので。

 「彼はまさに、適切な選手の一例です。獲得したのは、そうであることが確信できたからこそです。昨シーズンはヘタフェで、ほとんどビルドアップをせず、セカンドボールを多く拾うようなサッカーの中にいました。ただそれでも、いつもピッチの内側に身体を向けてボールを受けに行く、頭の中に常に次のパスコースを描いている、プレースキックも上手いといった特徴は見えていました。ですから、私たちの環境に身を置けば技術・戦術的にさらに進化するだろうと想像できました。ここには、彼の潜在能力に見合ったパフォーマンスを引き出す環境があるからです。ただ、それは毎日セスクやスタッフと一緒にいて、チームが何を必要としているのかを肌で理解していたからこそ見えたことです。毎日そこにいなければわからないことなのです」

――つまり、セスクのビジョンを共有することが、今のあなたの仕事にとって最も重要なことだと?

……

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Profile

片野 道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。

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