PK戦が映すJリーグの現在地。エンタメとW杯対策の交差点(後編)
【特集】“もう一つのサッカー”PK戦の深層#2
90分で決着がつかなくても、試合は終わらない――2026年の百年構想リーグでJリーグは、リーグ戦としては異例のPK戦導入に踏み切った。W杯過去2大会で日本のベスト8を阻んだ壁。それがPK戦だった。Jリーグの日常に新たな景色が加わったこのタイミングで、“もう一つのサッカー”とも言えるPK戦の深層を多角的に考える。
第1&2回は、Jリーグフットボール本部フットボール企画部長の吉川光敏氏に、JリーグはなぜPK戦を導入したのか、その理由を聞いた。後編では導入後の反応とともに、百年構想リーグを設計した舞台裏、そして新シーズンへ向けた改革の方向性を明かしてもらった。
AFCや欧州リーグも関心を寄せるPK戦という「実験」
――シーズン序盤が終わり、実際に多くのPK戦が行われていますが、選手や現場から届いている声はありますか?
「直接的にも間接的にも声は届いています。公式戦で蹴るのは選手にとって貴重な機会だと言われていますし、特にGKは普段と違って輝ける場でもあるので、そこは嬉しいという声をいただいています。一方で、どうしてもPK戦は外した場面がピックアップされてしまうので、その辺りは視点を変えてもいいかなと考えたりもしています。
あとはPK戦で注目されている点で言えば、去年、AFCが開催している会議でシーズン移行のことを説明した際に、『JリーグはこのPK戦を含めて非常に面白い取り組みをしている』という声をいただきました。2月にもワールドリーグアソシエーションという、世界各国のリーグ担当者が集まる会議がありましたが、そこでも欧州5大リーグの方々から、このPK戦は興味深いという声をいただいているので、全部終わったら、また各国リーグとの情報提供や意見交換をしたいと考えています」
――欧州視点でいくと、PK戦には消極的かなと思いましたが、運営サイドではそうでもないんですね。
「あまりないトライですので、それがどう影響するのかは興味があるのではと思います。我々としても、Jリーグ発信でこうしたやり方が世界各国の新しいルールや、トライアルのきっかけになれば面白いなと考えたりもします」
――あとJ1は外国人監督が多いので、「PK戦はサッカーではない」といった否定的な意見もちらほら目にします。この辺りはある程度想定内というか、導入時点でも議論はありましたか?
「はい、ございました。PK戦で決めるのか、Vゴール、サドンデス、色々な議論はありましたが、先ほどの3つの観点などから総合的に考慮しながら決めたところです。我々としては、シーズン序盤に関してはファン・サポーターの方々にとっても、ポジティブに捉えていただいたかなと思っております。また、サッカーの一部であるかないかの議論も、それが起こること自体はすごくポジティブに捉えています」
育成年代でPKの経験をどう増やすか
――この後、もしかすると良くも悪くも、選手や見ている側も含めてPK戦に慣れてしまうかもしれません。緊張感が薄れたり、お腹いっぱいになって飽きてしまったり、その辺りで今後の見通しはどう考えていますか?
「そうですね。少しずつ目新しさがなくなってくるとは思っています。それはピッチの中だけではなく、ピッチ外の色々な施策等でどうカバーしていくのか。今後我々としても考えていかないといけないと思いますし、実際に動いているところでもあります」
――ピッチ外の施策というのは、たとえばどのような?
「盛り上げるためのマーケティング施策やイベント、オールスターも含めてですね。やっぱりPK戦を導入したのはW杯のこともありますが、この百年構想リーグ、Jリーグのためでもあったわけです。盛り上げて、緊張感を増して、強度を上げてと、それを色々な方法でやっていこうと考えています」
――このPK戦について、選手以外に監督からは何か意見や反応は来ていますか?
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Profile
清水 英斗
サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』『日本サッカーを強くする観戦力 決定力は誤解されている』『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。
