
山口体制5年目、進化する湘南スタイル。「守備をやりながら攻撃をスタートできる仕組みづくりを考えている」
2025注目Jクラブキャンプレポート#6
湘南ベルマーレ
新体制発表会、新チーム始動、そしてキャンプと各Jクラブが2025シーズン開幕に向けた準備を進めている。1年間を駆け抜ける体の土台、戦術の基礎を築く集中期間だが、その実態はなかなか見えてこない。そこで密着取材している番記者たちに昨季の課題を踏まえた取り組み、今季のサッカースタイルや新加入選手の現状など、注目クラブの最新情報をレポートしてもらおう。
第6回は、山口智監督体制5年目を迎えた湘南ベルマーレ。昨季は得点が大きく伸びた一方で、失点数の多さが課題として突きつけられた。「もう一度守備の際の組織力から入り、攻撃の組織力につなげたい」(山口監督)。進化する湘南スタイルの最前線をレポートする。
本質の追求に変わりはない。相手を見ながら判断すること、主体的にボールを奪いに行く、第一にゴールを目指す、そのための準備とポジショニング――シーズンが改まっても、メンバーが入れ替わっても、チームとしてやるべき土台と指揮官が求める基準は揺るがない。
湘南は昨季、15位に甘んじた。リーグ7位タイの得点を記した一方で、同ワースト6位に沈んだ失点総数が、残留争いにも身を置いた彼らの課題を明確に告げていた。
球際だけでなく「チームとしての守備」を強調
迎えた今季、始動からキャンプを通じて強調されてきたのは他でもない、守備だった。昨季の反省に触れつつ、山口智監督は言う。
「組織として防げる失点は多かった。その点、守備のやり方や考え方を早めに覚えてほしかったので、特にキャンプでは意識して取り組みました」
確かに昨季のJ1の結果を紐解くと、得点53、失点58の湘南に対し、6位の東京Vが得点51、失点51、7位のFC東京は得点53、失点51と、得点総数では引けを取らないものの、失点総数で後塵を拝し、順位では大きく水をあけられた。裏を返せば、上位進出のポイントの1つは失点を減らすことにあろう。
キャンプは鹿児島県指宿市で約2週間行われた。トレーニングでとりわけ感じられたのは、守備のディテールの追求だ。組織的に網を張りつつ、局面では半歩の寄せや切り替えのスピードを求め、加えて積極的にアプローチするのか、ゴールを守る点に重きを置くのか、ゾーンの使い分けを含めてチームとしての共有を深めている。
指揮官が続ける。……

Profile
隈元 大吾
湘南ベルマーレを中心に取材、執筆。サッカー専門誌や一般誌、Web媒体等に寄稿するほか、クラブのオフィシャルハンドブックやマッチデイプログラム、企画等に携わる。著書に『監督・曺貴裁の指導論~選手を伸ばす30のエピソード』(産業能率大学出版部)など。