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ボール支配率46%でクロアチアに3-0!ニコ&ヤマルを前面に出す新生スペインのお披露目【EURO分析】

2024.06.17

【特集】EURO2024 注目マッチ分析 #1
グループB第1節:スペイン 3-0 クロアチア

7月14日までドイツで開催されるEURO2024。グループステージから決勝ラウンドまで注目の試合を、各国の事情に精通するレギュラー執筆陣や戦術分析のスペシャリストが独自の視点で深堀り!

スペイン、クロアチア、イタリア、アルバニアが同居するグループBの初戦で実現したスペイン対クロアチアは、29分モラタ、32分ファビアン・ルイス、45+2分カルバハルの前半3ゴールで、ルイス・デ・ラ・フエンテ監督のチームに軍配が上がった。

逆足ウインガーが左右サイドに張る、今までにないスタイル

 スペインがクロアチアに快勝(3-0)した試合は、新生スペインのプレゼンテーションと言っていい。ボール支配率46%での大勝。これが新生のゆえんである。

 スペインが支配率で下回ったのは2014年11月のドイツ戦(親善試合)以来112試合ぶり。これまでポゼッションはスペインにとって必要条件だった。上回っても必ず勝てるわけではないが、上回らないと勝てない。ドイツ戦も0-1で敗れている。

 支配率の低下すなわちスタイルの変化である。

 以下がクロアチア戦のスターティングメンバーだが、明らかにこれまでと違うところがある。

 それはウインガー2枚の存在だ。1対1で対角線ドリブルを仕掛けられる逆足ウインガーがニコ・ウィリアムス、ラミン・ヤマルと、左右サイドに張っている。

 こんなことは今までなかった。EURO2008優勝時のメンバーでは、左サイドにいたのはダビド・シルバで、右がイニエスタだった。2010年W杯では左はペドロで、右がイニエスタだった。MF大国スペインではそもそもウインガーが人手不足で、08年メンバーには1人もおらず、10年メンバーにはヘスス・ナバスがいただけ。もっともこれはウインガーの優先順位が低く、トップ下タイプのMFやサイドを張れるFWが優先して招集されていた面もある。

 それが今大会のメンバーには2人いる。それだけで貴重なのだが、加えて2人は足を止めて抜くドリブルとスピードを使って抜くドリブルの2種類の使い手である。要はスピードとテクニックを兼ね備えている。スペースがない状況なら足を止めて、ある状況なら走り込んでと、オールマイティな単独打開力が期待できる。これを生かさない手はない。

 かつてシャビ、イニエスタ、シルバ、カソルラ、イスコ、セスクのチームだった代表は、今大会はニコ・ウィリアムスとヤマルを前面に出したチームになっている。

21歳のニコ・ウィリアムス(アスレティック・ビルバオ所属)と、16歳338日でEURO最年少出場記録を更新したヤマル(バルセロナ所属)

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。