FEATURE

「サンガスタジアム by KYOCERA」が提供する日常の意義【合同会社ビバ&サンガ・中澤登紀子インタビュー後編】

2024.02.27

なぜ、新プロジェクトが続々発表?サッカースタジアムの未来#13

Jリーグ30周年の次のフェーズとして、「スタジアム」は最重要課題の1つ。進捗中の国内の個別プロジェクトを掘り下げると同時に海外事例も紹介し、建設の背景から活用法まで幅広く考察する。

第13回は、前回に続いて「サンガスタジアム by KYOCERA」の指定管理者を務める合同会社ビバ&サンガの中澤登紀子氏にご登場いただき、併設されている付帯施設の利用状況も含めて、スタジアムが地域の方々の日常にどう溶け込んでいるのかの現状を伺った。

←前編へ

約17メートル!国際基準を満たす圧巻のクライミングウォール!

――サンガスタジアムはスポーツ庁が挙げる、まちづくりや地域活性化の核となるスタジアム・アリーナの実現を目指すスタジアム・アリーナ改革のモデルである『多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ』として選定されたと。その中で数々の付帯施設があるわけですけど、これはもうスタジアムを開設する時から構想として重視していたわけですよね?

 「そうですね、京都府がそういった付帯施設を設けて、日常的な賑わいを生んでいこうと最初の段階で考えられていたことです」

――数ある付帯施設の中で、中澤さんが特に推したいものはありますか?

 「もちろん全部推したいです(笑)。その中でも建設段階から決まっていた『クライミング施設』は圧巻です。バックスタンド側の地下1階から地上2階までをドーンと吹き抜けにして、そこに高さ約17メートルのウォールが作られています。そこは今までのスタジアムのイメージとは違いますよね。空いている場所にあとから何かを入れるのではなくて、最初からこれを作るということは決められていたので、そこは大きかったと思います。私はクライミングもテレビでちょっと見たことがあった程度で、最初は『ボルダリングとクライミングって何が違うの?』という感じでした」

――僕は今そこにいます(笑)。

 「サンガスタジアムには『スピード』『リード』『ボルダリング』と3つのスポーツクライミングの種目それぞれの壁がしっかりあります。また、国際基準も満たしているので、『スピードクライミング』は日本のトップレベルのツアー(大会)が開催されていて、去年の3月にはここで当時の日本新記録も生まれました。そんなトップアスリートの方にもご利用いただき、日ごろは一般の皆さまにもご利用いただいています。

 失礼ながらもともとサッカーとバスケぐらいしか知らなかった私にしてみると、『こんなにクライミングをされる方っていらっしゃるんだ』というぐらいご利用いただいているんですよね。お越しいただいている一般の方々が、高さ約17メートルのウォールを登られる姿を見たら、『スポーツっていいなあ』と改めて感じますし、日常的にスポーツが楽しめる施設は大切だなと。基本的に平日の営業は午後からになるんですけど、誰もいないということはなくて、誰かしらいらっしゃっています」

そびえ立つクライミングウォール(Photo: VIVA&SANGA)

――へえ。そうなんですか!

 「もしかするとスタジアムの中の施設は閑散としているイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれないですけど、全然そんなことはないですね。あとは地元の先輩がクライミングをしにいらっしゃって、『あれ?中澤じゃん?どうしたの?』『ああ、ここで働いているんです』みたいなこともありますよ(笑)。そういうことも嬉しいですよね」

――お話を伺う前には、正直クライミングの施設ってどれぐらい利用者がいるんだろうと思っていました。

 「そうですよね。実は『この施設があるから亀岡市に移住してきました』というご家族もいらっしゃいます」

――それは凄いですね!

 「そういう方もいらしたりしますし、ボルダリングであればお1人でもできるので、学生の頃に団体種目でスポーツをされていた方で、大人になってから始められる方もいらっしゃると伺いました」

――もうクライミングの伝道師みたいですね(笑)

 「一見できそうに見えても、実際にやってみると日常的にされている皆さんのすごさを感じますし、トップアスリートのすごさにも触れられて、日ごろからサンガスタジアムでコミュニケーションが生まれていることも、とても嬉しいです」

クライミングウォール(Photo: VIVA&SANGA)

『KIRI no KO』『びばっこ保育園』と子どもの集まる付帯施設も

――他にはどういった付帯施設があるのでしょうか?

 「『子育て世代に優しいスタジアム』を目指していることもあって、2023年4月にオープンした子ども向けの木育ひろば『KIRI no KO(きりのこ)』や企業主導型保育園の『びばっこ保育園』などがあります。……

Profile

土屋 雅史

1979年8月18日生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社。学生時代からヘビーな視聴者だった「Foot!」ではAD、ディレクター、プロデューサーとすべてを経験。2021年からフリーランスとして活動中。昔は現場、TV中継含めて年間1000試合ぐらい見ていたこともありました。サッカー大好き!