名優たちの“セカンドライフ”
欧州のトップリーグで輝かしい実績を残した名優たちが、新たな挑戦の場として欧州以外の地域へと旅立つケースが増えている。しかし、そのチャレンジの様子はなかなか伝わってこない。そんな彼らの、新天地での近況にスポットライトを当てる。
from USA
JOE COLE
ジョー・コール
文 大谷 駿
今年3月のこと。プレミアリーグの日程が空いた時期を利用して、ウェストハムの面々は暖かいマイアミでミッドシーズンキャンプを張っていた。その合宿地に懐かしい顔があった。サングラス姿で選手たちと談笑するその男は、元イングランド代表MFジョー・コールその人だった。
ロンドン生まれ、アカデミー育ちのJ.コールは生粋のハマーズっ子。17歳でプロデビューした古巣クラブだから、挨拶がてら顔を出してもなんら不思議はない。ただ、なぜアメリカにいたのか。そう、彼は今、アメリカの地で現役生活を続けているのだ。
渡米したのは2年前。最後にプレミアでプレーしたアストンビラ時代、たび重なるケガにより思い通りに動かない自身の身体に「失望していた」という。そこでコベントリーに活躍の場を移したJ.コールは、3部リーグで「まだプレーに対する喜びや愛情を感じられる」ことを再確認した。
そのコベントリーとの契約が満了になった16年夏、舞い込んできたのが「いつかプレーしてみたかった」というアメリカの、フロリダ州西海岸に本拠を置くタンパベイ・ローディーズからの誘いだった。
彼が契約した当時のタンパベイは北米サッカーリーグ(NASL)に所属していた。このリーグはMLSの実質2部とされていたが、昇降格がないいわゆる“独立リーグ”だ。ハマーズとチェルシーで盟友だったランパードらが華やかなMLSで活躍したことを考えると、下位ディビジョンを選んだことには少なからず驚きを覚えるかもしれない。
だが、流浪の天才MFの思いはシンプル。「ただサッカーをしたい」という一点に集約されていた。3人の子供を含む家族が快適に暮らせる土地かどうか。そして何より、自身の身体が第一線レベルの負荷に耐えられない中でも、自分のプレーやアイディアを存分に表現できる環境かどうか。それが確固たる判断基準だったのだ。
■ 主将として攻撃を牽引
かくして未開の地を踏んだJ.コールは、NASLで躍動した。ある試合では鮮やかなオーバーヘッドシュートをゴールに叩き込み、またある試合ではトップコーナーに強烈なミドルシュートを突き刺した。加入初年度からいきなり9得点7アシストをマーク。リーグの年間ベストイレブンに選出され、年間MVP候補にも挙げられた。ファンタジスタ、ここにあり。まさにそれを印象づける活躍ぶりで、すぐさまフロリダの人気者になった。
当初は17年末までの契約だったが、1年間の延長オプションを行使。今年もタンパベイでプレーを続けている。クラブはNASLから新たに米2部リーグとして認可されたユナイテッドサッカーリーグ(USL)の東地区に昨年から所属を移しており、3月から開幕した2018年シーズンは昨年に続く2シーズン連続でのプレーオフ進出を目指し奮闘中だ。
J.コールはキャプテンマークを巻いてプレーし、今年もゴールにアシストにとタンパベイの攻撃をリード。契約が満了する今年がラストシーズンになると見る向きが多いが、「楽しめているうちはプレーを続けるつもり」だという。
フロリダの明るい太陽の下、サルバドール・ダリ美術館の隣に住み、小1時間で美しいビーチにもディズニーリゾートにも行ける生活環境も気に入っている様子で「恵まれた環境にいるよ」と笑う。家族ともども、新生活を楽しめているようだ。
Joe Cole
ジョー・コール
(タンパベイ・ローディーズ/元イングランド代表)
1981.11.8(36歳) 175cm/76kg MF ENGLAND
1998-03 West Ham
2003-10 Chelsea
2010-11 Liverpool
2011-12 Lille (FRA) on loan
2012 Liverpool
2013-14 West Ham
2014-15 Aston Villa
2015-16 Coventry
2016- Tampa Bay Rowdies (USA)
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