サウダーデの国からボア・ノイテ
文 沢田啓明
今年1月に世界サッカー史上2番目の高額違約金(1億6000万ユーロ=約208億円)でリバプールからバルセロナへ移籍したブラジル代表MFコウチーニョは、入団会見で「子供の頃からの夢が叶った」と感極まった表情を浮かべた。このクラブでプレーする実に35人目のブラジル人選手となった彼を含め、誰もがその一員となったことに感激し、興奮を隠さない。ブラジル人選手は、なぜそろいもそろってバルサに憧れるのか。
バルサに最初に加入したブラジル人選手は、1931~32年に在籍したボランチのファウストとGKジャグアレーの2人。しかし、当時リーガでは外国人選手の出場が認められておらず、親善試合でプレーしただけ。1947~49年には右ウイングのルシジオが在籍したが、彼も3試合の出場にとどまった。バルサでブラジル人選手のイメージを劇的に変えたのが、1957~62年に在籍したFWエバリスト・デ・マセード。洗練されたテクニックと高い決定力を発揮し、226試合に出場して178得点を挙げ、クラブのレジェンドとなった。
なぜ大成功できるのか?
過去、バルサで顕著な成功を収めたブラジル人選手は、このマセードに加えてロマーリオ、ロナウド、ソニー・アンデルソン、リバウド、ロナウジーニョ、デコ(ポルトガルに帰化)、ダニエウ・アウベス、そしてネイマールあたり。D.アウベスを除き、全員アタッカーだ。このうちロマーリオは1994年、ロナウドは1996年、リバウドは1999年、ロナウジーニョは2004年と2005年の2度、バルサ在籍中に世界最優秀選手に選ばれており、ブラジル人には「バルサで成長して世界一の選手になった」というイメージがある。
一方、バルサの宿敵レアル・マドリーに在籍したブラジル人選手は25人で、このうち顕著な成功を収めたのはロベルト・カルロス、ロナウド、マルセロくらい。在籍中に世界最優秀選手となったのは2002年のロナウドだけで、ロビーニョとカカーは期待を裏切った。クラブとしての実績ではチャンピオンズリーグを制覇した回数(12対5)でもリーガの優勝回数(33対25)でもマドリーの方が上なのだが、ブラジル人にとってはバルサの方が輝かしく見える。それは過去、ブラジル人選手を大いに輝かせてくれたからなのだろう。
バルセロナは気候が温暖で、海沿いにある。ブラジル人は陽光と海が大好き。街の開放的な雰囲気も居心地がいい。攻撃的で戦術的制約が少ないのも、ブラジル人向きだ。しかし、ブラジル人選手がバルサで成功する最大の理由は「最高の選手がバルサを選ぶから」で、換言すれば「バルサがその時どきのブラジル最高の選手を獲得するから」ではないか。
果たして、コウチーニョはこのクラブでさらに成長できるのか。セレソンにとっても極めて重要な選手であり、ブラジル国民はバルサでの今後に大いに注目している。
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