「5戦未勝利」or「5戦無敗」?大分トリニータが長いトンネルを抜けた理由と、次なる課題
トリニータ流離譚 第39回
J3からJ2、そしてJ1へと昇格し、そこで課題を突きつけられ、漂泊しながら試練を克服して成長していく大分トリニータのリアルな姿を、ひぐらしひなつが綴る。第39回は、4試合連続ドローから一転、山形戦で6試合ぶりの勝利をつかんだ大分の現在地に迫る。堅守を支えるダブルボランチ、攻撃に厚みを加えるマテウス・レイリアと復帰したパトリッキ・ヴェロン、そして土壇場で決勝点を奪った古川大悟。積み上げてきた粘り強さを上昇気流へと変えるために、四方田修平監督が掲げる「いろいろなことができるチーム」への道筋を探る。
10月3日、クラサスドーム大分で開催されたJ2第9節・モンテディオ山形戦に2-1で勝利して、大分トリニータはひとまず、長いトンネルを抜けた。

第8節終了時点で1勝5分2敗。開幕の湘南ベルマーレ戦を黒星スタートし、アウェイでベガルタ仙台に引き分けた後、第3節のいわきFC戦で4-1と大勝。だが、その後は勝ちきれない試合が続いていた。新体制でまだ戦術浸透途上の徳島ヴォルティスに敗れ、全敗中だったFC今治と引き分けて初勝点を献上。アウェイでRB大宮アルディージャの攻撃力に耐えスコアレスドローで勝ち点1を積んだものの、続く北海道コンサドーレ札幌戦では勝利を目前にしながら90+5分に失点して勝ち点2を手放す。藤枝MYFC戦は戦術のハマらなかった前半を立て直してなんとか追いつき、4戦連続引き分けの“ドロー沼”状態。1カ月以上未勝利で、特に札幌戦での追いつかれ方が、少しずつメンタル的なダメージをもたらしていた。
好調なチームと不調なチームが徐々にはっきり分かれつつあるものの、現時点では上位グループと下位グループの勝ち点差も大きくは広がっていない。1勝すれば順位がジャンプアップする状況で、なんとしてもそろそろ勝利が欲しかった。
そんなシチュエーションで迎えた山形戦。山形とはJ2・J3百年構想リーグのプレーオフ第2戦以来の対戦だった。その日は不調にあえぐ者同士、いかにもそれらしい様相の試合を繰り広げた末に、大分が1-0で勝利してJ2・J3リーグの最終順位27位、山形が28位に収まった。ただ、それまでのリーグ戦で、大分の対山形の相性は最悪。2014年J2第16節に1-0で勝利して以降、5分8敗と勝利がない上に、大量失点する試合も多かった。直近の公式戦では勝ったとはいえ、このタイミングではあまり当たりたくないカードの一枚だ。
それでも、チームには踏ん張れるだけの手がかりもあった。勝ち点3にこそ届いていないものの、多少の波はありながら、チームとして前進している手ごたえが感じられる。9月15日にはマテウス・レイリアが水戸ホーリーホックから完全移籍加入し、複数名の負傷者が復帰するという明るい材料もあった。
「ドロー沼」から抜け出すために。大分を支えたリーグ最少タイの堅守
なにより、仙台や大宮といった攻撃力の高い相手も無得点に抑えた守備が、チームの粘り強さにつながっていた。第8節終了時点で6失点は、まさに次に対戦する山形と並ぶリーグ最少。山形はJ2・J3百年構想リーグの反省から、今季に向けて守備を整理した様子が窺える。大分は戦力補強により個々のクオリティをアップすることで、攻守両面の強度を高めようとしている印象だ。
開幕当初は3バックの中央を務めるペレイラや守護神ムン・キョンゴンの個のポテンシャルに頼ってピンチをしのぐ場面が目立ったが、徐々に組織的な色合いも見えるようになってきた。3バックの右の宮川歩己と左の三竿雄斗がペレイラとコミュニケーションを取りながらラインを統率しつつ、その2人も個の強度を高めていることが要因の1つと考えられる。


堅守を維持しているもう1つの手がかりは、ダブルボランチの安定感だ。開幕から2試合は[3-5-2]のアンカーシステムを採用したが、中盤での守備面の負荷からか、第3節からは[3-4-2-1]へと変更。J2・J3百年構想リーグから四方田修平監督体制の下でプレーしてきた山口卓己が2戦目の仙台戦で負傷離脱したこともあり、第2節までアンカーを務めていた林田滉也とコンビを組んだのは榊原彗悟だった。その榊原も第5節の今治戦で負傷すると、それまで2列目でプレーしていた西村恭史がボランチへと移った。
大量4得点で勝利した第3節のいわき戦で、ダイナミックな個人技を交え2得点を挙げた西村は、フィールドのほとんどのポジションでプレーできるユーティリティ性も強みの1つ。だが、本職はボランチと本人が言う通り、中盤の底でも存在感を発揮する。
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Profile
ひぐらしひなつ
大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。最新刊は2023年3月『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』。 note:https://note.com/windegg
