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栃木シティの実績ある選手が次々と「再生」する理由。「アタッキングフットボール」の影に隠れた緻密な戦略

2026.09.27

栃木シティに所属する人気選手、田中パウロ淳一が関東リーグから這い上がり「再生」したストーリーは広く知られるが、今季も、実績のある小池裕太や西谷和希らが、より適正なポジションに配置され、より輝くことでチームの大きな力になっている。「再生」をもたらす土壌を作りあげる、緻密な戦略に迫った。

コスパの良いチーム編成で期待値を上回る

 J2第8節を終えて、栃木シティは3勝1分け4敗。順位は11位につける。失点は13とやや多いものの、目を引くのはリーグ5位の14得点だ。クラブとして掲げるのは、常に「アタッキングフットボール」。昇格組ながら、それが通用する手応えを得たJ2序盤戦だった。

 特にインパクトを与えたのは、5節札幌戦の4得点だろう。小池裕太、西谷和希がそれぞれ2得点を挙げ、4-1で完勝した。ただし、実はこの試合に関しては、札幌に支配される時間が長く、栃木シティのゴール期待値は0.8にとどまった。

 裏を返せば、たった0.8の期待値で4得点を奪ったという、恐ろしいほどの決定力が浮かび上がる。特に56分に小池が決めた3点目は、角度のない場所から強烈な左足でニア天井を突く、スーパーゴールだった。西谷のゴールも質が高く、期待値から大きく上振れした4得点になった。

 「栃木シティの個の力やばい……!」「どんだけ金持ってんだ!」

 そんなコメントをネットやSNSでは見かけたが、それは少し誤解がある。今季の栃木シティの強化費は現時点では不明だが、『Transfermarkt』を参考に今季スカッドの総市場価値を見ると、約11億円。J2では12番目だ。昇格組としてはかなり頑張って積み増しているものの、事業規模はリーグの中位やや下に過ぎない。昨年のJ3でも予算はリーグの中位やや下側だったが、それでも優勝昇格を果たした。

 つまり、相対的に少ない予算でコスパ良くチームを編成し、期待値を上回る結果を出していく。それが現時点の栃木シティのやり方だ。

キーワードは実績のある選手たちの「再生」

 実際、小池や西谷は名のある選手だが、近年の評価額は下降傾向だった。小池は度重なる大怪我に悩まされ、2020年からの6年間で出場したリーグ戦はわずか20試合程度にとどまる。2025年の神戸では1試合も出場しなかった。西谷も2024年に徳島を退団した後は、金沢に所属し、2025年はカテゴリを下げてJ3でプレーした。山下敬大もまた、大きな怪我に悩まされ、近年の試合出場は少なかった。

 そうして評価額が下降してきた30歳前後の選手のポテンシャルを再評価し、栃木シティで「再生」させる。元々が実績のある選手なので、再生に成功した暁のパフォーマンスは折り紙付きだ。

 そもそもクラブのアイドルである田中パウロ淳一も、「再生」した選手のひとりだ。2022年に松本山雅を契約満了になった後、Jリーグ合同トライアウトに参加するもチームが決まらず、現役続行すら危ぶまれる中で、栃木シティに加入し、関東リーグから共に昇格ロードを歩んできた。

田中パウロ淳一

 今矢直城監督は、「自分の中では『再生』しているイメージはなくて。でも周囲からはそういう評価になるんだなと。正直、本人が頑張ったことだし、僕はそこに関しては意識していなかった」と語る。とはいえ、埋もれた選手を発見し、再び輝かせる手法は、客観的に見れば栃木シティの躍進を支える「再生」と言える。

 こうしてコスパの良いチーム編成を重視した結果、栃木シティのスカッドの平均年齢は30歳。こちらもリーグ首位だ。若手に目が向くこの時代に、あえて「再生」のブルーオーシャンに漕ぎ出していく。栃木シティは戦術も編成も、あっちこっちと尖っている。

……

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Profile

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』『日本サッカーを強くする観戦力 決定力は誤解されている』『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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