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エメリの下で「解体」ではなく「進化」へ。アストンビラが総額660億円の主力大量放出&鈴木彩艶ら新戦力大量獲得に踏み切った理由

2026.09.07

2025-26シーズンは実に30年ぶりのタイトル獲得となるEL制覇を成し遂げ、今季は2季ぶりにCLの舞台に返り咲くことにもなったアストンビラ。しかし彼らが今オフに選択したのは、成功の余韻に浸る「維持」ではなく、成長の痛みも恐れない「進化」だった。総額660億円に上る主力大量放出を断行し、日本代表GK鈴木彩艶をはじめとする新戦力を次々と獲得した理由とは?ウナイ・エメリとともに新たなページを開く「フェーズⅠ」から「フェーズⅡ」への突入を、Xで「AVFC Japan」として日本のサポーター向けに同クラブの情報を発信している安洋一郎氏と読み解く。

アストンビラが迎えた転換期

 解体か、進化か。今夏、アストンビラは大きな転換点を迎えた。

 これまで主力を「売らない」ことで強くなってきたバーミンガムの古豪が、その方針を自ら覆したのだ。とりわけ消極的だったのが、ビッグ6と呼ばれるプレミアリーグの強豪クラブへの主力売却だった。

 実際、2018-19シーズンから2025-26シーズンにかけてビッグ6へ活躍の場を移した主力選手は、2021年夏に移籍したジャック・グリーリッシュのみ。それも1億ポンドの契約解除条項による移籍で、交渉の末に放出したケースではなかった。

 プレミアリーグが定めるPSR(Profitability and Sustainability Rules/収益と持続可能性に関する規則)を遵守するため、ドウグラス・ルイスの放出に動いた際も、同リーグ内への売却を避けるべく、ユベントスへ逆オファーする形を取った。

 ここまで徹底して同リーグのライバルへの主力売却に消極的だったクラブが、今夏はユーリ・ティーレマンス(→マンチェスター・ユナイテッド)、モーガン・ロジャーズ(→チェルシー)、エズリ・コンサ(→アーセナル)、エミリアーノ・マルティネス(→チェルシー)の4人をプレミアリーグのクラブへ売却した。

 これは、クラブにとって大規模な方針転換を意味する。なぜ、今季もCLに出場するなど順調な歩みを続けている中で、アストンビラはこれほど大きく方針を変えたのだろうか。

フェーズⅠ集大成は30年ぶり戴冠のEL制覇

 まずは今夏までのアストンビラの歩みを振り返る必要がある。

 2022年11月にウナイ・エメリが監督に就任して以降、劇的な飛躍を遂げた。最下位から3ポイント差の16位でバトンを受け取ったスペイン人指揮官は、初陣からチームを劇的に進化させたのだ。

 最初の移籍市場となった2023年冬に即戦力として獲得したのは、アレックス・モレノのみ。「既存戦力からほとんどメンバーが変わらない」中でも連勝を重ね、2022-23シーズンを7位でフィニッシュ。ECL出場権を獲得し、13シーズンぶりに欧州カップ戦へ返り咲いた。

 その後の躍進は記憶に新しい。続く2023-24シーズンは欧州カップ戦と並行した戦いを続けながら4位フィニッシュを果たし、41年ぶりにCL出場権を獲得。2024-25シーズンにはCLでベスト8へと駒を進めるなど、エメリは残留争いをしていたチームを欧州カップ戦の常連へと変貌させた。

 その集大成となったのが、2025-26シーズンのEL決勝だった。

 フライブルクをまったく寄せつけない圧倒的なフットボールをみせて3-0で勝利。1995-96シーズン以来30年ぶりとなる主要タイトル、そして1981-82シーズン以来44年ぶりとなる欧州タイトルを手にした。

 それと同時に、エメリ体制における「フェーズⅠ」は頂点を極めたのだった。

「主力を売らない」強化方針の表と裏

 この「フェーズⅠ」に欠かせなかったのが、冒頭でも紹介した「主力を売らない」強化方針だ。

 エメリをはじめとするスペイン人指導者の下で、選手たちのレベルは何段階も上がった。それと同時に他クラブから多くの選手に関心が寄せられたが、「細かく新契約を提示」することで、各選手のコミットメントを高めていた。

 例えば、2024年2月に加入したロジャーズは、エメリ体制で最も成長した選手の1人だろう。ミドルズブラで先発したリーグ戦が半分しかなかった選手を、英国人史上最高額となる1億1700万ポンドで売却するまでに至った。

 彼は加入時の契約に加え、在籍2年半の間に2度契約を延長し、そのたびに条件を引き上げている。こうした昇給を伴う契約更新には、選手のコミットメントと市場価値を高める狙いがあった。

……

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Profile

安 洋一郎

1998年生まれ、東京都出身。高校2年生の頃から『MILKサッカーアカデミー』の佐藤祐一が運営する『株式会社Lifepicture』で、サッカーのデータ分析や記事制作に従事。大学卒業と同時に独立してフリーランスのライターとして活動する。中学生の頃よりアストン・ヴィラを応援しており、クラブ公式サポーターズクラブ『AVFC Japan』を複数名で運営。プレミアリーグからEFLまでイングランドのフットボールを幅広く追っている。

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